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ケインズ「雇用、利子、お金の一般理論」を分かりやすく解説:ケインズ経済学とは

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2007-2008年に世界金融危機が起こりました。

自由市場を推進していった結果、多くの人が貧困や失業に苦しむ世界的危機を迎えてしまったのです。

多くの人は、政府の積極的な介入がなければ、また同じような大恐慌が起こりうるだろう、と考えます。

そして持ち上げられたのが、ケインズ経済学です。

政府の介入を拒む古典派経済学でもなく、政府による完全主導の目指すマルクス経済学でもない、その中間に位置するケインズの主張は、現在多くの人に受け入れられています。

この記事では、そんなケインズ「雇用、利子、お金の一般理論」について解説していきます😆

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ケインズとは

Wikipedia参照

ジョン・メイナード・ケインズ(1883-1946)はイギリスの経済学者です。

20世紀経済学における最重要人物であり、多くの経済学者に影響を与えました。

主な著書には、「雇用、利子、お金の一般理論」「平和の経済的帰結」「貨幣改革論」などがあります。

ケインズはイギリスのケンブリッジにて生まれます。

ケンブリッジ大学の論理学者・経済学者である父親と、ケンブリッジ市の市長である母親を持ち、恵まれた環境で育ちます。

ケンブリッジ大学に入学したケインズは、経済学者のマーシャルピグーをはじめとする、偉大な学者たちに学びました。

大学卒業後はインド省に入省しますが、結局ケンブリッジ大学に戻って経済学を教え始めます。

その後は「エコノミック・ジャーナル」誌の編集長に就任したり、大蔵省に入って第一次世界大戦のための戦費調達をしたりします。

また、イギリス代表団に加わってパリ講和条約にも参加、ドイツに対する巨額の賠償金要求に反対しました

ケインズの考える理想的な経済理論は、彼の著書である「平和の経済的帰結」や「雇用、利子、お金の一般理論」を通して、広く人々に知られるようになります。

晩年にはイギリス代表として第二次世界大戦後の交渉に参加、国際通貨基金世界銀行の設立に尽力します。

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ケインズ「雇用、利子、お金の一般理論」の解説

「雇用、利子、お金の一般理論」は1936年にケインズによって書かれた経済学書です。

ケインズ経済学の根底思想が丁寧に解説された本であり、後の経済学界に大きな影響を与えます。

現代のマクロ経済学の基礎を作り出し、戦後経済を立て直せたのは、このケインズ理論があってこそなのです。

以降、具体的な内容について解説していきます。

古典派経済学の否定

ケインズは古典派経済学の理論に疑義を呈します。

古典派経済学の主な主張では、失業は存在しません

労働者や自然資本、その他の設備などは全て社会の中で最適に配分・利用され、自動的に調節されるのです。

例えば、古典派経済学の想定する経済の中で不況が起こります。

すると労働の価値は下がってしまうので、労働者が得られる賃金は減ってしまいます。

一方雇い主は、安い賃金で働いてくれる労働者を増やして、利潤を増やそうとします。

よって完全雇用が成し遂げられるのです。

しかし、ケインズはこの理論に真っ向から反対します。

彼の根拠について見ていきましょう。

賃金は流動的に変化しない

現実の世界には様々な不確定要素が存在しています。

例えば、労働者の中には、身体的に働くことが難しい人、転職中の人、休職中の人などが存在しています。

また現実の市場では、需要と供給は常に変動しており、完全に一致することはありません。

他にも、失業者が増えても、労働組合が一定水準の賃金を確保するために、賃金引き下げ反対のストライキを起こすかもしれません。

これらの不確定要素は賃金に”非伸縮的”な動きをさせます。

賃金は柔軟な変化ができなくなり、古典派経済学の主張する自動調節機能はエラーを起こしてしまうのです。

こうなると、完全雇用の達成は難しくなります。

政府の介入によって、このエラーを修正していかなければならないのです。

賃金の低下は景気を回復させない

上の章で述べた通り、古典派経済学では、景気を回復させるための決め手として、賃金の柔軟性を掲げます。

賃金が自由に流動的に変化していくことにより、不景気に対する刺激を促せる、という考え方です。

しかし、この理論は成り立たない、とケインズは考えます。

賃金の低下は労働者の生活の悪化を招きます。

彼らの多くは消費行動にお金を使うので、より貧困に向かっていきます。

一方、資本家は収入を消費よりも貯蓄に回します。

このような経済行動の違いにより、貧富の差はどんどん広がります。

また、賃金の低下は負債を抱える人の支払い能力を低下させます。

支払い能力は下がるのに、借金の総額は変わりません。

つまり、賃金の引き下げは、デフレーションや消費の落ち込みによる経済の停滞、金融機関の信用収縮(金融機関が融資条件を厳格化し、投資を渋ること)などの悪循環を生み出す可能性があるのです。

だからこそ、ケインズは政府の介入の必要性を説きます。

”セイの法則”は上手く機能しない

古典派経済学の根底を担う理論に、”セイの法則”と呼ばれるものがあります。

セイの法則とは、供給はそれ自身の需要を創造する、ことを指す法則

例えば、需要よりも多くの供給があれば、価格は安くなります。

需要よりも少ない供給であれば、値段は上がります。

ただし、この法則には前提として、一人の生産者が稼いだお金は全て、生産物の価値を増加させるための投資に使われるものである、という条件があります。

市場に関わる全ての人が一切の貯金をせずに、その全ての金銭を投資に使うという前提です。

ケインズは、貯蓄が全て生産への投資に使われることはない、と考えます。

多くの人は、経済の持つ不確実性に対する不安により、貯金します。

銀行は融資の厳格化を行い、投資資金を減らしますし、借りても融資を受けるのにためらいが生じます。

こうなると、”セイの法則”は作用せず、市場の自動調節も発動しません。

経済は停滞し、失業は増加するのです。

ケインズ理論

古典派経済学は机上の空論を並べがちであり、現実を見ていないとケインズは考えます。

彼は、自動調節によって得られる自然金利ではなく、人為的に考えられた最適金利を設定することが、完全雇用を達成するためには必要だと考えたのです。

最適金利とは、資本家が金利から得る利益が完全雇用の妨げにならないくらいの金利のことです。

金利を一定水準に保つことで、需要を高いままで安定させ、経済を健全な状態に保つことを目指したのです。

またケインズは、政府による雇用創出が不況を解決する方法であると考えました。

経済的不況は市場の自動調節機能では解決することが難しいです。

だからこそ、政府主導でお金を使い、新たな公共事業を創出することによって、雇用を拡大するべきなのです

政府が雇用拡大のために投資をすると、国民にはサービスを消費する余裕が生まれ、経済全体は活性化していきます。

ケインズは、公共投資と経済への効果の間には一定の乗数があり、大きな効果を持つと主張します。

ケインズ理論をまとめると、以下のようになります。

  • 政府は金融政策と財政政策を用いて経済を健康な状態に保ち、景気変動の影響を弱める役割を持つ
  • 金融政策とは、中央銀行による通貨供給量の変化や、金利の調整を指す
  • 財政政策とは、政府による課税や財政支出の調整を指す

ニューディール政策

ケインズ理論を忠実に再現した実例が、フランクリン・ルーズベルト大統領のニューディール政策です。

ニューディール政策では、政府は銀行制度を救済する法案を作ることで、政府関連の仕事を効率化し、大規模な経経事業計画を打ち立てることで、多くの雇用を創出しました。

この政策によって、アメリカは金本位制から脱却し、通貨供給量を大幅に増加させました。

結果的に、国民は安心して支出ができるようになり、アメリカを漂っていた停滞感は吹き飛び、国全体の景気は回復しました。

これは政府主導でなければ実現できなかったであろう、景気回復の事例です。

ダムや橋、道路などの建設をする公共事業への投資(財政政策)や、国全体の通貨供給量の増加(金融政策)は、国中にお金を行き渡らせる役割を果たしました。

政府が最後のお金の使い手になることで、景気を安定させることができるのです。

最低限の政府介入

常に政府による市場への介入が必要なわけではありません。

中央によるコントロールは、完全雇用を達成できるくらいの経済的な総生産量を確保できたら、必要ありません。

ケインズは、経済が安定したら古典派経済学のモデルに戻ることを勧めています。

ケインズが古典派経済学に反論したのは、あくまで不景気からの脱却という点に関して不満があったからです。

健康な経済状態においては、古典派経済学は有効であると、ケインズは考えていました。

事実、第二次世界大戦後の国々はケインズの主張をそのまま参考に政策が行われました。

まず中央がインフレターゲットを設定します。

財政政策や金融政策を通して、政府は国内の高い需要をキープします。

一方、市場における価格設定や投資はすべて個人や企業に委ねられていました。

ケインズ理論からすると、大恐慌というのは、単なる経済のエンジンの故障なのです。

故障している部分を政府が修理してあげれば、また経済は勝手に動き始めます。

必要以上に市場や経済を社会化する必要はないのです。

人道的な資本主義

失業をゼロにすることや、貧困の根絶、平等社会の実現を考えると、共産主義的な権威主義国が思い浮かびます。

確かに共産主義的な政策ならば、上記の問題を解決できる可能性があります。

しかしそれでは、効率性と自由を犠牲にしている、とケインズは主張します。

ケインズ経済学が目指すのは、全体主義的思想に傾倒しない、資本主義的な民主主義社会の繁栄です

そのためには、政府の役割をある程度の範囲まで拡大することが唯一の方法である、と考えたのです。

この、個人の自由を保証する人道的な資本主義は、今のところ成功しているようにも見えます。

多くの人は平和に生活することができ、過去と比べると不平等は減少、全ての人が自らの権利を主張することができているからです。

ケインズの生み出した経済理論は、戦後の国々を繁栄へと導いたのでした。

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まとめ

ケインズは、彼の著書「雇用、利子、お金の一般理論」にて、古典派経済学の限界と政府の役割について解説しました。

彼の経済理論は、戦後の世界の繁栄の土台となりました。

多くの人を貧困や不平等から救い、平和な世界を築き上げるための設計図を生み出したのです。

以下、記事のまとめです。

  • ケインズとは、イギリスの経済学者である
  • 「雇用、利子、お金の一般理論」の内容
    • 古典派経済学を否定する、主な根拠は以下の3つ
      • 賃金は流動的に変化しない
      • 賃金の低下は景気を回復させない
      • ”セイの法則”は上手く機能しない
    • ケインズ理論では、政府による金融政策と財政政策を通して、経済を健康な状態に保つことを目指す
      • ニューディール政策は主な具体例
      • ケインズは人道的な資本主義を目指した。

ぜひ参考にしてみてください😆

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