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ラッセル「幸福論」を分かりやすく要約・解説

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世界三大幸福論の1つである、ラッセルの「幸福論」。

彼の壮絶な人生とその中から紡ぎだされた「幸福論」には、時代を超えた価値と魅力が存在しています。

この記事では、ラッセルの「幸福論」について解説していきます。

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ラッセルとは

Wikipedia参照

ラッセルは本名をバートランド・ラッセルといい、名門貴族出身の数学者、哲学者です。

ケンブリッジ大学で、数学と哲学を融合した数理哲学に熱中した彼は、若いころに「数学原理」という本を出版し、一躍有名となりました。

また平和活動に力を入れていたことでも有名で、ラッセル・アインシュタイン宣言という核兵器の廃絶を目的にした声明を出しています。

これだけ見ると、非常に華々しい経歴の持ち主のように見えますが、彼の人生は壮絶なものでした。

2歳の頃に母親を、4歳の頃に父親を失い、育ての親であった祖父母には厳格に育てられました。

祖父母はピューリタン的教育(厳しい教育を施すキリスト教プロテスタントの一派)をラッセルに施し、幼いころから厳しく質素な生活を送っていました。

これが原因で、思春期のラッセルは自殺願望さえあったとされています

さらに、大人になったラッセルは第一次世界大戦に直面します。

人類の幸福を願う彼は、全く合理的でない戦争の勃発に反対し、反戦活動を行います

人々の為に立ち上がった彼でしたが、結果的に投獄・逮捕され、危険な目に何度も遭います。

そんな壮絶な人生を歩んできたラッセルが58歳(1930年)の頃に出版した本が「幸福論」なのです。

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ラッセル「幸福論」の解説

幸福論が出版されたのは1930年です。

今から90年前に発売された本ではありますが、内容は現代につながる部分が非常に多いです

人間の悩みは何千年も前から変わることがありません。

不幸の原因

幸福になるためには、まず不幸を避ける必要があります。

不幸の原因はなんなのでしょうか?

ラッセルは、不幸の原因は自己没頭であると言います。

不幸の原因は自己没頭である

自己没頭とは、自分にばかり気が向いてしまうことを指します。

自分のことばかりを考えている人は、不幸になりやすいのです。

ラッセルは不幸になりやすい3つのタイプの人間を紹介しています。

  • 罪人
  • ナルシスト
  • 誇大妄想狂

以上の3つです。

1つずつ解説していきます。

罪人

ここでいう罪人とは、悪いことをした捕まるような罪人ではなく、日常的に自分を非難して罪の意識に取りつかれている人のことを指します。

自分の理想像とありのままの姿のギャップに苦しんでいる人と言い換えることもできます。

  • どうせ自分はダメなんだ
  • なんで自分はこんなに理想と違うんだろう
  • 自分は価値がない人間だ

このように日頃から思われている方は、罪人に当てはまるでしょう。

なぜこのような思想が生まれてしまうのか。

これには親や友人、教師などからの刷り込みが挙げられます。

幼いころから

  • あなたは何をやってもダメなんだから、諦めなさい
  • 君は成績が悪いから何者にもなれない
  • 厳しい教育に耐えられないなら、君には価値がない
  • どうせお前にはできない

などと言われて育ったら、この罪人的な思考は心の奥底に刷り込まれてしまいます。

自分の中で勝手に、自分を縛るような禁止令を作っているのです。

よって幸福になるには、まず幼少期に刷り込まれた間違った信条と愛情の圧政から解放される必要があるのです

ラッセルの過去

彼は子供時代に親からがちがちの管理を受け、人間らしい欲求を失ってしまったと言っています。

不幸な人は共通して、子供時代に正常な満足を奪われた経験があります

周りの人間からの刷り込みは非常に強力です。

悪い刷り込みを多く受けて育った人間は、自己没頭人間になってしまうのです。

  • いい大学に入る
  • いい会社で働く
  • 楽しみは老後にまでとっておき、今は勤勉に働く

これらの思想は、あなたの根本的な欲求でしょうか?

それとも社会からの刷り込みでしょうか?

自らの信条を疑い、正しい思考を身に着けましょう。

ナルシスト

ナルシストとは、自分を賛美し、人からも賞賛されたいと願う習慣を本質としている人を指します。

ナルシストは全てが悪いわけではありません。

自分を賛美することも、人から称賛されたいという思いも、ある程度は必要です。

しかし、度が過ぎるとそれは不幸に繋がるのです

世間からの賞賛は、どんなに得られたとしても幸福になることはできません。

これがラッセルの意見です。

虚栄心は、限度を超えたらあなたに無気力と退屈をもたらします。

それでもなぜ人びとは世間からの賞賛を求めるのでしょうか?

それは多くの人には自信がないからです。

結局、自分に自信がない人は周りからの「承認」を過度に欲しがってしまいます。

では、自分に自信をつけるにはどうすればいいのか?

自信をつけるにはまず、自尊心を育てる必要があります

そして、自尊心を育てるためには、自分の興味を刺激された活動を立派にやりとげる必要があると、ラッセルは言います。

誇大妄想狂

誇大妄想狂とは、権力を求め、愛されるよりも恐れられることを望む人のことを指します。

権力を求めることは悪いことではなく、正常な人間の要素です。

しかし、これもまた度が過ぎると厄介です。

過去の名君たちも、この権力を求めすぎたことが原因で失墜をしています。

  • アレクサンダー大王
  • ナポレオン
  • 煬帝

彼らはみな、権力を持ちすぎた、もしくは求めすぎたがゆえに人々から反感をかい、最終的に不幸になってしまったのです。

数々の偉業を成し遂げ、自分は神であると豪語し、欲のままに行動することは、果たして本当に幸せなのでしょうか?

大切なのは、そんなことではなく、人間らしさであるとラッセルは言います。

不幸をもたらす行動

不幸の原因をさらに深堀したラッセルは、3つの行動にたどり着きます。

  • 競争
  • 妬み
  • 世評に対するおびえ

これらの行動は、あなたに不幸をもたらすのです。

こちらも1つずつ見ていきましょう。

競争

競争に勝つということは正しいモチベーションです。

競争があるからこそ、効率的に成長することができるのです。

しかし、ある一点を超えた段階で、競争は無意味になります。

例に習って、度が過ぎた競争は不幸をもたらすのです

競争による成功は、幸福の1要素でしかありません。

競争が全てではまったくないのです。

競争はどんどんと加速していきます。

上には上がいるので、比較対象のレベルが上がれば自然とあなたは敗北してしまいます。

だからこそ、この行き過ぎた競争の勝利は幸福のためには必要がない要素なのです

たまに食べるラーメンは美味しいですが、毎日食べていては体調を崩してしまいます。

それと同じく、毎日競争していては幸福ではなくなってしまいます。

適度な競争が大切なのです。

幸福も健康もバランスが保たれているからこそ成立するのです。

妬み

妬みは人間の情念の中で、最も普遍的であり、かつ最も不幸なことです。

妬みの思想を持っていたら、不幸感をより感じやすくなってしまいます。

妬みの根本には、競争や他者との比較が含まれています

この他者比較の思考をなくさない限り、妬みから逃げることはできません。

なぜなら、本人がどんなに努力したところで、歴史や伝説の中には優れた人物がたくさん存在しているからです。

彼らと比較して悲しくなって不幸感を得るのは、非常に不幸なことです。

他者との比較を辞め、妬みの感情を捨てましょう

そうでないと、一生妬みはあなたについてきます。

妬みを捨てるためのポイントとして、ラッセルは不必要な謙遜を辞めるべきだと言っています。

不必要な謙遜をやめる

必要以上の謙遜は美徳でもなんでもなく、ただ自分を卑下しているだけなのです

もしあなたが、周りよりも自分が劣っている、下であると信じているのであれば、自然に周りの人間を恨み、悪意を持つようになってしまうでしょう。

自分を卑下し、周りと比べ、周囲の人間を妬み恨む、これが不幸のサイクルなのです。

比較の先に幸福は存在しません。

ラッセルは哲学的に次のように述べます。

人間は自己を超越することを学び、自己を超越して宇宙の自由を獲得せよ

自己超越とは、「自分」という内ばかり見るのではなく、「自分」の外の世界を見つめることを指します。

宇宙の自由とは、物事を宇宙規模で捉え、客観的に眺めること、思考をコントロールすることを指します。

つまり、自分にばかり意識を向け自己没頭するのではなく、物事を広い視野でとらえ、思考をコントロールすることが幸福に繋がる、ということです。

現代はSNSが発展し、より簡単に比較ができる時代です。

しかし、他人との競争を意識していたらそもそも幸福にはなれないのです

自分の思考を変え、幸福に指針は合わせましょう。

世評に対するおびえ

周囲の意見や雑音に対するおびえや恐れは、あなたを抑圧し成長の妨げとなります

これらの恐怖は、あなたが恐れれば恐れるほど、牙を向けてきます。

これをラッセルは世評の暴虐性と呼びます。

ではどうすれば、このおびえはなくなるのでしょうか?

それは、世評に無関心になることです。

これは1つの立派な能力であり、幸福の泉源でもあります。

  • あなたには夢を叶えるのは無理
  • 君には才能がない
  • センスがない
  • 過去の実績がないから無理

これらの意見を言われたとしても、これに無関心であること、それが重要です。

何を言われても関係ない、実際にその意見は正しいかもしれない、でもそれは自分でいつか自覚できることだから、とりあえずやってみる。

この姿勢が大切なのです。

夢を放棄するな

世間の意見を参考に、自分の夢を捨てるべきではありません

もしあなたが職場の人間関係に困っているのなら、自分のことを理解してくれる人がいる会社に行くべきです。

もし部活のメンバーと馴染めないのなら、他の部活に移るべきです。

もし結婚相手が理想的ではないのなら、別れて別の人を探すべきです。

あなたが叶えたい夢があるのなら、誰になんて言われても挑戦するべきです。

周りがなんていうかは関係ないのです。

内から湧き上がる衝動があなたの道を切り拓きます

親などの周りの意見ではなく、あなたの内からくる衝動で人生を決めましょう。

これがあなたの人生に幸福をもたらすのです。

幸福をもたらすもの

続いて幸福をもたらすものについて解説していきます。

本書ではいくつもの要素が取り上げられていますが、ここでは2つの紹介させていただきます。

趣味

趣味を持つことはあなたを幸福にしてくれます。

ただし、ここでいう趣味とは私心のない趣味に限ります。

  • この趣味は私に何を持たらしてくれるのか
  • これをすることでどんなメリットがあるのか
  • 趣味の先に何か目的がある

このような思考で扱う趣味ではいけません。

単純な興味からくる、純粋な趣味が、あなたに幸福をもたらしてくれます。

私心のない趣味は悲しみを癒す効果があります

なぜなら、自分の思考のチャンネルを瞬間的に変えることができるからです。

悲しい出来事があると、多くの人はうだうだとその悩みを考えてしまいます。

しかし、大抵の悩みは考えたところで何も解決しません。

そうではなく、自分の趣味に没頭することで思考のベクトルを無理やり変え、悲しみに対策をしよう、ということです。

趣味として最適なのは、やっているだけで楽しいと感じられるようなものです。

ラッセルを例に挙げると、彼にとっては数学が趣味でした。

現実で辛い事や悲しいことがあったら、数学に打ち込むことで思考を切り替えていたのです。

不幸な感情が生まれたときの対策を持っておくと良いでしょう。

中庸

中庸とは、バランス感覚のことを指します。

全ての物事において、幸福を得るためにはバランスが必要です。

極端な姿勢は最終的に不幸をもたらすのです

ラッセルが特に強調しているのが、努力とあきらめのバランスです。

幸福は努力をしなければ得られません。

しかし、誰もが努力をしたからといって幸福になれるわけではありません。

幸福になるには、努力もあきらめも必要なのです

賢い人間は、自分で防げる不幸を防ぎ、自分の力ではどうしようもない不幸は、貴重な時間と感情を浪費しないように努める人間です。 

2種類のあきらめ

あきらめには2種類あります。

  • 「絶望」からくるあきらめ
  • 「不屈の希望」からくるあきらめ

後者である、「不屈の希望」からくるあきらめを目指しましょう。

あきらめることは基本的に苦痛を伴います。

不屈の希望を持ったうえでのあきらめは、自分の挑戦は夢を叶えるためのステップでしかない、だから無駄では決してなかった、と立ち直ることができます。

一方、絶望からくるあきらめを繰り返していると、どんどんと自分の自信を失い、失望と幻滅に苛まれることとなります。

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ラッセル「幸福論」まとめ

ラッセルの人生は華々しくも苦悩に満ちたものでした。

そんな彼が自分の経験を頼りに書き記した幸福に関する書籍が「幸福論」なのです。

彼は自分の辛い境遇を何度も乗り越え、自らの幸福を信じ追い続けた1人の人間でした。

彼の幸福に対する姿勢は、最終的に自らのものだけでなく、他者と共有するものであるという結論に行きつきます。

だからこそ、彼は反戦活動をしラッセル・アインシュタイン宣言を発表したのです。

彼の幸福哲学はあなたを幸せに導きます。

  • 不幸の原因は自己没頭である
  • 不幸なタイプの人間は、罪人・ナルシスト・誇大妄想狂に分類される
  • 不幸をもたらす行動には、競争・妬み・世評へのおそれがある
  • 周りの意見で自分の夢を放棄するべきではない、自分から湧き上がる衝動があなたを幸せに導く
  • 私欲のない趣味や中庸の精神は、幸福をもたらす

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