進化論をご存知でしょうか?
全ての生物はいまの種族として地球に突如発生したのではなく、進化した結果である、という主張をする論です。
この進化論は、ダーウィンの「種の起源」にて初めて言及されました。
キリスト教的な創造論が大多数を占めていた当時の時代において、この主張は大きな議論を呼びました。
この記事では、そんなダーウィン「種の起源」について解説していきます😆
ダーウィンとは
チャールズ・ダーウィン(1809-1882)とはイギリスの自然科学者です。
進化論という新たな概念を提唱したことで有名で、この理論は現代の生物学の根幹を担っています。
著書に「種の起源」があります。
裕福な家庭に生まれたダーウィンは、幼少期から家の広大な庭で鳥や昆虫の観察をして育ちます。
青年になったダーウィンはエジンバラ大学に入学、父の勧めで医学を勉強しようとしますが、血を見るのが苦手で断念します。
ケンブリッジ大学にて神学を学ぼうとしますが、これもまた興味がありません。
彼はだんだんと、幼いころからの興味分野であった博物学や地質学にのめりこんでいくのです。
大学を卒業した彼は、イギリスの測量船であるビーグル号に乗って、南米大陸海岸線の測量に出かけます。
5年にもおよぶ旅の結果、彼は多くの発見をし、数々の論文を発表します。
これが新たな「種」の発見へと繋がっていくのです。
ダーウィン「種の起源」の時代背景
ダーウィンの生きた19世紀は、キリスト教的思想が支配的な地位を築いていました。
人間は神様の次に偉くて、それ以下の動物は全て支配しても良い、という思想です。
また、全ての生物は神様によって設計されたものであり、地球に生まれた瞬間から種は決められていて、変化することも進化することもない、とされていました。
全ての生物に神という設計者がいると考える、創造論が主流だったのです。
これは仕方のない部分もあります。
例えば、人間の眼球などはすごく精緻に作られています。
寸分の狂いもなく正確に構築されているから、しっかりと機能するのです。
これが進化の過程で作られた、と考えるよりも、神のような何か万能な存在が作ってくれた、と考える方が納得できます。
ダーウィンはこの当時主流だった創造論に対抗する、進化論という概念を打ち立てたのです。
ダーウィン「種の起源」の内容
「種の起源」とはダーウィンが50歳の時(1859年)に出版された本です。
当時の常識を覆すような主張をするこの本は飛ぶように売れたそうです。
当時のイギリスの首相も、ヴィクトリア女王も読んだというので驚きです。
内容はタイトル通り、生物の種がどのような起源をたどったのか、を記してあります。
そもそも種とは、お互い同士生殖活動をして子孫を残していける個体の集まりを指します。
種とは、お互い同士生殖活動をして子孫を残していける個体の集まり
つまり、このような種がどのような経緯で現在の形に落ち着いているのかを説明しているのが「種の起源」なのです。
進化論
「種の起源」の軸となる主張は、進化論という考え方です。
進化論は、どんな生物でも進化の結果に現在の状況が存在しており、突如として地球上に生まれたわけではない、という主張をする論です。
進化論は、生物は進化する生き物であることを主張する
この主張の根幹を担うメカニズムが以下の2つです。
- 生存競争
- 自然淘汰
ダーウィンはこの2つのメカニズムが進化の原動力であると考えました。
生存競争
生存競争とは、自分が長く生き延びようとして、他の生物を押しのける際に発生する争いを指します。
一般的には、環境に適応した強い生き物が生き残ります。
生存競争とは、自分が長く生き延びようとして、他の生物を押しのける際に発生する争いを指し、環境に適応したものが生き残る
生き残った優秀な種は子孫を多く残します。
そうすることで、後世に優秀な遺伝子が継承されていくのです。
キリンの例を考えてみましょう。
大昔のキリンには、首の長いものと短いものが存在しました。
ある時に彼らは、低い位置にあった葉っぱを食べつくしてしまいます。
そうすると、首が長いキリンは上の方の葉っぱを食べれますが、首の短いキリンは食べ物がないので死んでしまいます。
そうすると、首の長いキリンだけが生き残り、結果的にその遺伝子が継承されていきます。
これを何世代も繰り返した結果、優秀な種が構成されるのです。
個体変異はもともと発生するものです。
100体の生物がいたら、それぞれ何かしらの違った個性を持っています。
ポイントは、環境に適応している生物が多く子孫を残すことです。
このメカニズムによって、種は進化・変化して、環境に適応することができるのです。
自然淘汰
生存競争に負けた、弱い種は自然淘汰されていきます。
またこれは、種だけでなく性質においても発生します。
環境に適応した性質が残り、それ以外は全て淘汰されていってしまうのです。
例えば以下のような事例が挙げられます。
- ライチョウは住む地域によって色が違う
- マデイラ諸島の甲虫は飛べない
- 深海魚には目がない
環境に適さないような種族や性質は、自然に淘汰されていくのです。
進化は変化である
生存競争と自然淘汰を理解すると、進化は変化であることが分かります。
進化することは、優れたものになる、ということではないのです。
上のステージに上がるのではなく、同じステージ上で横移動をしているだけなのです。
生物の生存競争は自然条件によって大きく左右されます。
地上では遠くまで見渡せる生物が有利かもしれませんが、深海ではそもそも眼は必要ないかもしれません。
大気の温度が1度違うだけで、種の関係性が大きく変化するかもしれません。
結局、どんな生物でも環境の条件次第で勝者にも敗者にもなり得ます。
環境の変化によって進化の方向性が変わるからです。
そして種と種の関係性も非常に複雑です。
人智では理解しきれないほどの膨大な情報の中で、進化は発生しているのです。
不都合な事実
ダーウィンの進化論は、当時の常識を覆すような主張でした。
それもあって、彼には多くの批判の声が届きます。
事実、彼の主張も完璧ではありませんでした。
しかし、そんな不都合な事実であっても、真摯に受け止めて反論を築き上げたのがダーウィンの素晴らしいところです。
この章では、進化論に対する批判と、それに対するダーウィンの反論について解説していきます。
中間種が存在しない
進化の過程において、中間種が発生することは間違いないでしょう。
しかし、当時の世界ではその中間種の化石が見つかったことはありませんでした。
中間種が存在することを証明できなかったのです。
これに対してダーウィンは2つの反論を提示します。
- 中間種は絶滅した
- 化石は極めて残りにくい
まず中間種は、進化の過程に一時的に存在する種なので、現代には存在しない、というのが反論の1つ目です。
2つ目でダーウィンは、中間種の化石の発見が極めて難しいことである、という反論をします。
そもそも化石とは、一定条件を満たしていないと生成されません。
さらに中間種ともなれば、進化の途中に位置している状態であり、確固とした大きな集団にはなっていません。
つまり、これらの条件をすべて満たした上で化石として発見されることは、かなり難易度が高いことを主張したのです。
複雑な器官の存在
生物には人智を超えるほどの複雑な機能を持った器官が存在します。
例えば眼球は非常に精緻に構成されています。
ピントで調整し、光の加減さえもコントロールできるのです。
こんな精密機械のような器官をどうやって種は作り出したのか?というのが次なる不都合な事実です。
この意見に対するダーウィンの反論は、様々な段階の眼球が既に存在している、というものでした。
ダーウィンの進化論を考えると、全ての生物の眼球も生存競争と自然淘汰の中で変化してきたわけです。
そして変化した眼球を持っている生物は実際に存在します。
例えば、ミドリムシは眼球はなくても光を感じる器官があります。
プラナリアは、非常に原始的な眼球を持っており、くぼみを使って光の位置を特定します。
オウムガイは、ピンホールという穴を通すことで、目に像を作り出します。
このように、眼球1つを例に挙げても、進化の途中段階は存在しているのです。
同じ種が別大陸に存在
同じ種類の生物が遠く離れた別の大陸に存在していることも、不都合な事実でした。
神様がデザインしたんだから、そんなこともあるだろう、と考えることを放棄してしまう人もいる中、ダーウィンは反論材料を懸命に考えます。
植物の種は海をわたって別大陸まで移動することができます。
鳥に運んでもらったり、物理的に海を渡ったりすることができるからです。
しかし、哺乳類はどうでしょうか?
ダーウィンは当時、最適な答えを出すことはできませんでした。
氷河期や大陸移動説という概念は存在しておらず、的確な反論を導き出すことは容易ではなかったのです。
しかし、彼の不都合な事実から逃げずに反論をしっかりと準備し、科学的な証明をしようとする姿勢は、以降の科学の発展に大きな貢献をします。
進化の思想
ダーウィンは、分からないことは全て神のせいにしていた時代を終わらせ、科学の近代化に多大なる貢献をしました。
常識に反するような主張であっても、できるだけ科学的な根拠を用いて人々を説得し、学問を発展させていく彼の姿勢は、人間社会を大きく発展させたのです。
以下のような、彼の進化論が基となっている学問だっていくつもあります。
- 進化医学
- 生態学
- 心理学
人間も生物もみな平等である
ダーウィンの主張は大変優れたものであった一方、社会的に悪用されるケースもありました。
例えば、進化論や自然淘汰を人間社会に当てはめ、帝国主義の思想を正当化させた時代がありました。
ナチスドイツの全体主義などはそれに近いかもしれません。
ダーウィンの理論を持ってくると、一見その主張は科学的にも裏付けられており、正しい行為のように思えてきます。
しかし、だからといって殺人や迫害が肯定されるわけではありません。
忘れてはいけないのは、生物間における上下関係は存在しないということです。
進化という現象は、垂直への移動ではなく水平への移動です。
進化したから偉くなる、といった話ではありません。
進化はあくまで環境に適応するための変化であり、上のステージにあがった、というわけではありません。
生物に上下関係はありません。
全てが等しく平等であり、人間同士の差別や虐待は正当化することができません。
自然淘汰によって環境に適応していくことと、人間が意図的に淘汰していくことに、全く関連性はないのです。
ダーウィン「種の起源」まとめ
ダーウィンは「種の起源」を通して、進化論という新たな概念を提唱しました。
彼の画期的なアイデアと、それを支える論理的な主張は、科学の近代化に多大なる貢献をしました。
彼の進化論におけるポイントは、進化とは優れた存在になるのではなく、変化に適応するために変化するだけである、ということです。
ぜひ参考にしてみてください😆
- ダーウィンとはイギリスの自然科学者である
- 進化論とは、全ての生命は進化した結果、今の状態があると主張する。また生存競争を通して、生物は自然淘汰されていく、という仮定に基づく
- 中間種が存在しない、複雑な器官が存在する、同じ種が別大陸に存在する、などの不都合な事実も存在する
- 進化とは、タテの移動ではなく、ヨコの移動である。
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