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リカード「経済学および課税の原理」を分かりやすく解説:比較優位説とは

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現代は関税や保護政策を辞めて、国際貿易を促進する風潮があります。

EU(欧州連合)やTPP(環太平洋パートナーシップ協定)はその最たる例でしょう。

自由貿易による世界経済の発展を目指す努力は、現在も続いているのです。

そしてこの自由貿易の基礎を築いた人物がリカードです。

この記事では、リカード著「経済学および課税の原理」について解説していきます😆

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デヴィッド・リカードとは

Wikipedia参照

デヴィッド・リカード(1772-1823)とはイギリスの経済学者です。

比較優位説という理論を提唱し、自由貿易の可能性を主張したことで知られています。

また、金融という観点から経済を研究することにより、経済学に科学をもたらした人物でもあります。

彼の著書には「経済学および課税の原理」「The High Price of Bullion, a Proof of the Depreciation of Bank Notes」「Essay on the Influence of a Low Price of Corn on the Profits of Stock」などがあります。

リカードはユダヤ系の両親を持ち、1772年にロンドンの東部にて生まれます。

14歳にして父親の株式仲買業に加わり、その腕前を向上させます。

その後、通貨の裁定取引や自ら行った株式仲買業によって財産を築きました。

また、彼が27歳の時にアダム・スミスの「国富論」を読み、経済学に大きな興味を抱くようになります。

リカードは42歳で仕事を引退し、財産家として大邸宅にて暮らすと当時に、下院議員となり経済についての研究を始めます。

彼は政治家として、政府の市場への関与を減らすことや、宗教的寛容を推し進めること、言論の自由を認めることなどを訴えます。

彼の主張は、現在の自由貿易を推進する人々の思想的支柱となっています。

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リカード「経済学および課税の原理」の解説

「経済学および課税の原理」(1817)はデヴィッド・リカードによって書かれた経済学書です。

彼の師匠でもあるジェームズ・ミルに勧められ書いた本でもあり、内容はとても難解で科学的なものとなっています。

内容に関しては、アダム・スミスの思想を前提におきながら、経済の構成を理論立てて解説しており、経済学の体系化に大きな貢献をしたと言えるでしょう。

以降、詳しい内容について見ていきます。

労働価値説

リカードの主張する経済理論の中に、労働価値説というものがあります。

これは古典派経済学の基礎を担う非常に重要な理論です。

労働価値説とは、物の価値はその生産のために投下された労働の量によって決定される、とする思想

また彼は、労働価値説を前提としたうえで商品の価格についての理論も構築します。

それが、市場価格自然価格です。

市場価格=需要と供給によって影響される(均衡しておらず変動している状態)、実際の価格

自然価格=需要と供給が均衡したときに成立する均衡価格、製品の生産に投資された労働や資本などを反映した価格

資本家は商品を生み出し販売を開始してからの一定期間、高い利益を得ることができます。

この状態を市場価格を享受している状態と呼びます。

一方、しばらく時間がたつと商品の値段は下がっていきます。

なぜなら、その商品の本当の価値(市場価値)が人々に知れ渡り、多くの資本がその市場に集中、競争が高まるからです。

競争が高まっている状態で、商品を今までと同じ値段で売っていては、お客さんは他者の商品を買うことになってしまいます。

この状態を自然価格を享受している状態と呼びます。

経済成長による所得配分理論

リカードは、経済成長が地主と資本家と労働者にどのような富の分配を施すのかを研究します。

まず地主について考えてみましょう。

リカードはトマス・マルサスの主張する、食糧生産の成長幅には限りがあるが、人口増加は際限がない、という理論を信じていました。

さらにそこに差額地代論という理論を合わせます。

人口が増えれば増えるほど、非常に肥えた優秀な土地は大量の食糧を生産できるので需要が増加、それに伴い優秀な土地には割増金が付与され、地代は増加していく、という理論です。

これらの理論より、経済が成長すれば(人口が増えれば)地主は多くの富を得ることができる、ということが分かります。

資本家はどうでしょうか?

彼らの利益は、商品の売上から労働者への賃金と地主への地代を払った後に残った金額となります。

経済が成長していれば、消費者の購買意欲は増し、商品の売上は伸びるでしょう。

またリカードの考えでは、国内の経済界ではその産業であっても利潤率は等しい、という前提があります。

ある業界で利益率が高いとそこに資本が集中、利益率が低いと資本は流出するからです。

つまり、どの業界に所属する資本家であっても、経済が成長すればある程度の富を得ることができます

労働者は働き続ける

リカードは市場価格と自然価格の理論を商品だけではなく、労働にも当てはめます。

労働力が不足している場合、労働者は高い賃金を資本家に要求でき、これは市場価格となります。

しかし、労働力の供給が増えれば増えるほど、彼らの労働価値は下がり、価格は自然価格へと均衡していきます。

つまり、労働者が増えるほど、労働価格(賃金)は下がっていくのです

基本的に賃金とは、労働者が生きていくために最低限は必要だろう、という生活費を基準に設定されます。

労働力が不足している段階であれば、より高い賃金を要求でき、働き続ける必要もなくなるでしょう。

しかし、リカードはそんな状態はやってこず、労働者は働き続け、資本家は何もせずに豊かに暮らす階級社会を予見します。

なぜなら、彼はトマス・マルサスの人口論を信じていたからです。

人口が増えた世界では、労働者は生きていくために安い賃金で長時間の労働を強いられます。

どんなに経済が発展し国の富が増加し、労働者の賃金が増加しても、働き続ける必要があるのです。

彼はこの理論を土台として、資本家や地主と労働者の経済格差が広がることを主張します。

経済停滞の対策

ちなみに、トマス・マルサスの人口論を信じたリカードは以下のような考察をします。

人口が増え食糧生産が追いつかない世界では、食糧価格はどんどん上がっていきます。

資本家は労働者が最低限の生活を営むための賃金を与えなければならないので、今まで以上の高賃金を提供します。

しかし、その結果資本家は自らの利益を減少させることになり、それが投資意欲の減退につながり、最終的には経済の停滞を迎えます。

リカードは、そんな経済の停滞を迎えることを阻止するために、穀物法(関税などで国内の地主を守る法律)の廃止が必要である、と訴えます。

これがなくなれば、海外から安い穀物を大量に輸入することができます。

市場の穀物の価格は下がり、資本家の利益は上昇し、投資額も上昇、経済は回復する、と考えたのです。

しかし、我々が忘れてはならない事実は、トマス・マルサスの理論は間違っていた、ということです。

現実世界では食糧供給は農業技術の発展により大幅に増加し、人口増加に間に合っています。

彼らの理論はあくまで理論であり、現在ではその間違いが証明されているのです。

比較優位説

リカードの近代経済学への貢献は、主に自由貿易の推進によるものです。

彼は比較優位説という理論のもと、国同士が自由に貿易をすることが双方にとってメリットをもたらすことを主張します。

これは、現在の保護主義への反対や関税撤廃の流れを生み出した源流でもあります。

比較優位説について詳細に見ていきましょう。

リカードはアダム・スミスの絶対優位説を修正して比較優位説を提唱しました。

両者を整理すると、以下のようになります。

絶対優位説=ある国が他国に比べて労働費用や天候、環境などの要因により商品を安く生産できる場合、絶対優位であり、多くの利益を得ることができる、とする説

比較優位説=それぞれの国が自身の最も得意な分野に集中することで、それぞれの国家が生産性を最大化でき、自由貿易を通じて商品を交換することで皆がメリットを享受できる、とする説

比較優位の具体例

絶対優位説と比較優位説の具体例を見ていきましょう。

ポルトガルとイギリス間での貿易を考えます。

まず、ポルトガルは天候が原因でワイン生産に適しています。

また、イギリスは文化的背景から毛織物の生産に向きます。

よって、両者はお互いの得意分野をそれぞれ極め、商品を大量生産してお互いに交換し合うことで、生産性を最大化し多くのメリットを享受できます。

絶対優位説はこの状態を指しています。

では続いて比較優位説を考えてみましょう。

もしイギリスがワインと毛織物のどちらともに関して、ポルトガルよりも絶対的に優位だったとしましょう。

この場合は、イギリスとポルトガルは貿易をするメリットはなくなるのでしょうか?

答えはNOです。リカードは、貿易をするほうが良いと考えます。

なぜなら、イギリスは両方の商品において優位だったとしても、どちらかに的を絞って専念した方が合理的に生産性を高められるからです。

例えば、イギリスが毛織物に専念したのなら、その生産性は高まります。一方ポルトガルはワインの生産があまり向いていなくても、そこを極めることで効率性を向上させ、イギリスと比べて比較優位を獲得できるのです。

このように、比較優位を根底に置く世界的な貿易関係は、世界全体の経済成長を促します。

保護主義も役立つ

ただ、現実世界はそんな単純ではありません。

国際政治や関税などの法律、国家間のルールなどを無視すればリカードの比較優位説は成り立ちます。

しかし、現実は社会的な理由や政治的な要因から、各国は優位ではない分野での生産を強いられています。

リカードもこの点に関して、保護主義的な政策は役に立つ、と言っています。

彼が保護政策も役に立つと主張する根拠は主に以下のような部分にあります。

  • 発展途上国は高い関税をかけることで国内産業を雇用を保護、経済成長を達成
  • 多くの人は海外産の商品よりも国内産の商品を好む

また、比較優位説にも以下のような問題点があります。

  • 国が特定の分野に偏りすぎると、そこが崩れたときの経済的ダメージが大きすぎる
  • 比較優位説を現実で実現するには、長い年月と社会的代償がかかる

重商主義への反論

ただ、リカードの構築した比較優位説を前提とする国際貿易論は大きな役割を果たしました。

それが、当時主流だった重商主義的な思想への反論という役割です。

重要主義とは、貿易を通じて富を自国に蓄積し、国富を増加させることを目指す経済思想を指す

重商主義は、貿易を通して他国から富を吸収することで、他国を犠牲にしながら自国が繁栄する、という思想を持っていました。

これは当時の植民地化の流れを作り出したイデオロギーでもあり、かなり批判が集まっていました。

そして貿易に関しても重商主義的な観点からの意見が多くなり、人々の批判の対象となっていました。

そこでリカードは比較優位説を提唱することで、自由貿易を行えば双方がメリットを得られる、ということを強く主張したのでした。

本来の貿易の価値は素晴らしいものであり、重商主義的な見解は間違っていることを人々に伝えたのです。

リカードの貿易論は現在でも、保護主義などの思想に対抗する理論として活躍しています。

世界的な保護政策の廃止に背景には、リカードの理論が存在しているのです。

そして彼の作り出した経済理論は、19世紀のイギリスの繁栄の土台となりました。

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まとめ

リカードは著書「経済学および課税の原理」を通して、労働価値説に伴う格差の拡大や比較優位説に伴う自由貿易の重要性を説きました。

彼の主張には間違った部分もあるものの、現在の経済理論の根底を担っている理論も存在します。

特に比較優位説という考え方は画期的なものであり、現在の国際経済学の基礎でもあります。

ぜひ参考にしてみてください😆

以下記事のまとめです。

リカードとはイギリスの経済学者である。

彼は…

  • 労働価値説や市場価格・自然価格の理論、差額地代論や利潤理論を通して、地主と資本家と労働者の経済格差を主張した。
  • 絶対優位説を修正した比較優位説を通して、自由貿易の可能性を訴えた。

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