オーストリアの精神科医であるヴィクトール・フランクルは、人生には苦しみがあるからこそ素晴らしい、と語りました。
彼のナチス強制収容所での経験を描いた「夜と霧」は今でも多くの人に希望を与えています。
「夜と霧」の詳しい解説についてはこちらをご覧ください😆
この記事では彼が導き出した、苦悩の在り方と人生の豊かさの関係性について解説します。
苦悩について
現代社会には数多くの苦悩が存在しています。
なかには苦悩しすぎて、自ら命を絶ってしまう人もいます。
我々は苦悩とどのように付き合っていけばいいのでしょうか?
大切なのは向き合い方だと、フランクルは言います。
あなたは苦悩なんてなくなってしまえばいい!、と思っていませんか?
- 苦しみがなくなれば私は幸せになれるのに
- 苦悩からはやく逃れたい!
- 苦悩することは人生において必要のないものだ
こう思われている方は、少し考え方を変える必要があるかもしれません。
フランクルは、苦悩とは人間の本性だと言います。
人間は苦悩と共にあることで完全な状態になれると言ったのです。
苦悩をなくしたい、苦悩から逃れたい、というような感情は方向が逆なのです。
人間は苦悩に立ち向かっているときに輝きを放ち、それを乗り越えた先に希望があると彼は言いました。
2つの苦悩
人間には多くの悩みがあります。
- じゃあ苦悩は全部、真っ正面から受け入れろってこと?
- そんなことできるの?
- どうしようもない悩みはどうするの?
このような疑問を持たれた方、ご名答です。
フランクルは苦悩に立ち向かうことは非常に重要であると言いました。
しかし、その苦悩とは”意味のある苦悩”でなければいけないのです。
人間は”意味のある苦悩”をするから、そこに尊厳が生まれるのです。
”意味のない苦悩”をひたすらしてても、時間の無駄でしかなく、立ち向かう必要はありません。
では、”意味のある苦悩”と”意味のない苦悩”、両者の違いは何でしょうか?
意味のある苦悩
意味のある苦悩とは、何かのため、誰かのための苦悩を指します。
意味のある苦悩とは、何かや誰かのための苦悩を指す
具体例を出しましょう。
- スラム街育ちの子供たちの教育をどうやって施そう?
- 自然環境問題への取り組みはどんなことをすれば良いだろう?
- お客さんに喜んでもらうには、どんな施策を打てばいいだろう?
これらのように、誰かや何かの役に立つための苦悩であれば、全力で取り組むべきなのです。
意味のない苦悩
意味のない苦悩とは、苦悩するための苦悩を指します。
意味のない苦悩とは、苦悩するための苦悩を指す
具体例は以下の通りです。
- 他人にどう思われるかな?だったら挑戦するのは辞めようかな?
- 私は上司に嫌われているかもしれない
- あの人と比較して私はなんてダメなんだ
これらのような、誰の為にもならないような時間だけが過ぎる苦悩は意味がありません。
頭の中で妄想したところで、現実は全く違うかもしれません。
感情がネガティブになるような意味のない苦悩をするのは避けましょう。
このような苦悩は立ち向かうのではなく、避けるようにしましょう。
現代社会の問題点
現代社会は”意味のない苦悩”を増幅させやすい環境となっています。
社会的に豊かになり、美味しい食べ物や便利な機械、素晴らしいエンターテインメントが存在しているのにも関わらず、人類の幸福度は下がっているのです。
そんな世界情勢の問題点の1つに”意味のない苦悩”が挙げられます。
伝統的な思想習慣や宗教的拘束が弱まり、より自由に生きられる現代において、全ての行動は自分で決めなければいけません。
- 君の趣味は?
- 君のなりたい職業は?
- 君の夢は?
- どんな人生を歩みたいの?
100年以上前などは、毎日の生活を一生懸命生きるのに精一杯だったでしょう。
将来の夢なんて語っている暇もなかったかもしれません。
しかし、現代は非常に恵まれた時代で、人々は自由に自分のやりたいことができるようになったのです。
しかし、どんなに自分に問いかけても、自分が何をするべきかは分からないことが多いです。
自分のことを考えれば考えるほど矛盾が生まれてきて、結局”意味のない苦悩”にたどり着いてしまうからです。
これでは幸福を手にすることはできません。
自分がどうあるべきか、ではなく、他者のために何ができるか、何かのために行動できるか、を問いましょう。
ストレスが足りない
現代人は良くも悪くも、非常に恵まれています。
この現状は”意味のない苦悩”を増加させることを説明しましたが、実は”意味のある苦悩”を減少させてもいます。
つまり、フランクルの語る人間の尊厳であり、幸福の源泉である”意味のある苦悩”は減少傾向にあり、不幸の種である”意味のない苦悩”は増えているのです。
なぜ”意味のある苦悩”は減少傾向にあるのでしょうか?
現代社会にはプレッシャーや緊張が足りないと、フランクルは言います。
楽に生きようと思えば、いくらでも楽に生きられる現代において、多くの人はそんなプレッシャーや緊張から離れているのです。
本来人間が感じるべき、社会からのプレッシャーや理想の自分の姿との乖離(実存的緊張)は薄れてきています。
現代社会における幸福とは、欲望を満たすことです。
困難を乗り越えた先に幸福がある、と唱えるフランクル
困難はできるだけ避けて、欲望を満たすことだけを考える現代人
資本主義というシステムは富を増加させることを目的としており、人間の幸福の最大化はゴールではありません。
見たいものだけを見て、見たくないものは見ない、そんな現代社会からは”意味のある悩み”は生まれにくいのです。
大切なのは向き合い方
資本主義社会や市場経済では、全ての物事を金銭という軸だけから判断します。
しかし、物事の価値とは金銭だけでは判断できません。
大切な人からもらったプレゼントは、1000円で買われたものかもしれませんが、あなたにとっては金銭では測り切れないような、素晴らしい価値を持っているはずです。
現代社会には精神性という評価軸が抜け落ちています。
金銭という横軸だけではなく、精神性という縦軸をあなたの評価基準に加えてあげましょう。
この精神性という観点を加えるだけで、全ての物事の見方は大きく変わります。
- 失敗にも意味がある
- 苦悩に立ち向かうことで得られる希望がある
- 他人の評価は関係ない、自分が価値を感じればそれでいい
物事を金銭だけで測るのではなく、精神性を加えて向き合ってみることが大切なのです。
誰かが決めた評価軸ではなく、あなたがどう感じるか、そこにあなたの尊厳があり、幸福の種があるのです。
過去は宝物である
”意味のある苦悩”から逃げずに、立ち向かって生きている人にとって、過去は人生を豊かにするかけがえのない宝物になります。
過去は過ぎ去るのではなく、蓄積されるのだフランクルは言います。
本気で生きた時間は、誰にも奪えない素晴らしい財産なのです。
そして、精神性を持って物事と向き合っている人にとっては、この宝物はさらに光り輝くものとなります。
誰にも作り出すことのできない、あなただけの宝の山なのです。
若いから価値があるという意見がありますが、逆もまた然りなのです。
年を取ることで、素晴らしい宝物が貯蓄されていくのです。
人生の宝物を増やせるような生き方を目指しましょう。
フランクル「夜と霧」まとめ
誰かのため何かのための苦悩は、あなたの人生を豊かにします。
「あなたは人生から問いかけられている」ことを忘れないようにしましょう。
以下記事のまとめです。
- 苦悩があるから人間には尊厳がある
- ”意味のある苦悩”には立ち向かい、”意味のない苦悩”からは逃げる
- 現代社会には多くの問題点がある
- ”意味のある苦悩”から逃げやすい
- ”意味のない苦悩”が増加しやすい
- 金銭だけで物事の価値を測りすぎていて、精神性が欠落している
- 苦悩と向き合う本気の人生は、過去という素晴らしい宝物になる
ぜひ参考にしてみてください😆
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