般若心経は1500年以上前から語り継がれてきた、非常に有名なお経です。
近年だと、ジョン・レノンやスティーブ・ジョブスなどがこの般若心経を心の支えにしていたことで有名です。
262文字しかない非常に短いお経ですが、そこにはとんでもない量のパワーが眠っているのです。
詠むだけで生きる希望や勇気が湧いてくると言われています。
この記事では、そんな般若心経について解説していきます。
般若心経とは
般若心経とは、262文字の漢字で構成された大乗仏教のお経のことを指します。
元々はインドで作られたもので、サンスクリット語(古代インド語)で書かれていましたが、玄奘三蔵がインドから日本に般若心経を持ち帰り、それを日本語に翻訳しました。
ちなみに玄奘三蔵とは、有名な昔話”西遊記”の三蔵法師を指しています。
三蔵法師とは、般若心経をインドから日本に持ち帰るという非常に大きな偉業を成し遂げた人でもありました。
般若とは、智慧(知恵)を指しており、物事を正しく捉える力を意味しています。
そして心経とは、教えのことを指します。
つまり、般若心経とは、智慧の教えなのです。
般若心経=智慧の教え
般若心経の元となったものは、全部で600巻も書かれているのですが、そこからエッセンスだけを抽出したものが般若心経となります。
内容に関しては、サンスクリット語から日本語に翻訳した部分もあれば、インドの音を残してオノマトペ的に表現されている部分もあります。
呪文としての意味合いが強い般若心経は、音をそのままに言語を変更する音写がカギになっています。
多くの人は文章の意味だけにフォーカスしてしまいがちですが、本来の般若心経には、音にも力があるようです。
だからこそ唱えることでパワーを強化することができると言われているのです。
「般若心経」の解説
ここからは般若心経の具体的な内容について解説していきます。
仏教と般若心経
まず、仏教の教えには五蘊(ごうん)というものがあります。
全ての物質は5つの構成要素で出来ている、という考え方です。
- 色(身体)
- 受(刺激の受け取り方)
- 想(想像する)
- 行(行動する意思作用)
- 識(心の中にニュートラルに映し出す)
この5つになります。
仏教では、人間も犬も魚も花も、全てがこれらの集合体であり、確固とした形あるものではない、と考えます。
我々は本当は存在せず、あくまで仮の姿であると考えるのです。
しかし、般若心経ではこの五蘊を否定します。
般若心経では、この世の全てはあなたの心が決めているだけで、実体があるものは存在しないと考えます。
例えば、紙の冊子を見たときに、あなたが本だと思うからそれは本になるわけです。
本だと思った結果、その物体の色(身体)は本になるわけです。
そもそも人間の視覚とは、光と目の前のものと、その反射を受け取る能力が生んだ、偶然の産物なのです。
日が沈んだら、本は見えなくなります。
そうしたら本の色はなくなるわけです。
空
我々は特定の概念を作り、その関係性の中で世界を見ています。
つまり、ものごとのありのままの姿を見ているのではなく、あくまで仮の概念を見ている、ということになります。
スマホがあったら画面をスワイプしてロックを解除しようとしますが、これはそもそもスマホという概念を認識しているからこそ成り立つ行為です。
スマホを知らなければ、その物体は全く意味をなさないわけです。
我々は本質ではなく、特定の概念に囚われた世界で生きています。
では、この概念に囚われた世界で生きていくことは何がいけないのでしょうか?
この生き方には1つ大きなリスクがあります。
それは、他人が決めた都合の良い概念に操られ、間違った行動をとってしまうかもしれない、というリスクです。
全ての物事に関する決めつけには、必ず間違いがあります。
例えば、あなたは天気が雨だったら、なんと表現しますか?
多くの人は、雨の場合は「悪い天気」、晴れの場合は「いい天気」と表現します。
しかし、雨も晴れも等しく価値があります。
どちらがいい、どちらが悪い、という概念は間違っているのです。
そして、全ての物事を概念に囚われずにありのまま見ることができる状態を”空”と言います。
空 = 全ての物事を概念に囚われずにありのまま見ることができる状態 = 悟り
仏教が目指す境地はこの”空”の状態であり、般若心経の核の思想もまた”空”なのです。
そして”色即是空”、”空即是色”という言葉は、この世に存在するもの(色)全てが空であり、実体をもっていない、という思想を意味します。
全ての概念や決めつけには間違いがある、これを理解すると、普段のモノの見方がガラッと変わります。
”空”には、人々の苦しみを取り払う力があるのです。
全ての行為は”空”に通ずる
諸行無常で、常に移り行く世界において、何か普遍的な法則はないかと人びとは探し続けます。
”空”とは、そんな世界の色々な法則が最終的にたどり着く1つの法則だと言われています。
物理学や科学、経済学などは全て万物に共通する、最後の法則を見つけ出そうと研究を積み重ねる学問です。
色んな分野で色んな法則が発見されています。
そして”空”とは、それら全てを統括する1つの法則なわけです。
”空”とは、言葉では表しきれない、人に伝えるのも難しい、でも存在はしている、という不思議なものです。
人類はこの”空”なるものをなんとか理解して、手中に収めたいと努力をしてきました。
- 芸術や写真は、連続した世界を切り取ること
- 物理や科学は、世界を支配する法則を切り取ること
つまり、人類の文化の根底には、”空”という考え方があるのです。
囚われた観念を解放する
現状は色々な観念に囚われています。
”空”とは全てのものごとをありのままの状態で見れている状態です。
仏教徒は、色々な修行を通して、この現実から”空”の世界への到達を目指しています。
そして、この固定された観念や概念をリセットし、新しく考え直すことを”無”と言います。
無 = 固定された観念や概念をリセットし、新しく考え直すこと
般若心経とは、誰でも簡単にこの”無”を行うことができるように作られたものです。
宗教にがっつり染まらなくても、お手軽に思考の囚われから解放するお経なのです。
般若心経は、宗教の域を超えて、万人に心のパワーを与えてくれるのです。
人間の苦しみの解放
人間の苦しみとはどこからくるのでしょうか?
仏教では、これは思考の囚われから来るものとされています。
- 友人ができない
- 家族が愛してくれない
- 物事が上手くいかない
- 成功できない
全ては思考の囚われが原因なのです。
世の中の本当の在り方を正しく見ることのできない愚かさが故に、人類は悩み苦しんでいるのです。
釈迦は、煩悩こそが人類の苦しみの元であると説きました。
般若心経の目的もまたここにあります。
つまり、人間の思考の囚われから来る煩悩や雑念を取り払うことで、苦しみから解放することが、般若心経の目的なのです。
般若心経の目的とは、人間の思考の囚われから来る煩悩や雑念を取り払うことで、苦しみから解放すること
般若心経では、全ての者が空である、という考えから煩悩すらも否定し、全てをありのまま受け入れよ、と教えます。
この考え方はあなたを苦しみから解放してくれるのです。
般若心経で思考をリセットする
般若心経には、自分の囚われた思考をリセットする力があります。
思考をリセットすることで、悩みや不安が解消されるのです。
般若心経は唱えることにも大きな意味があります。
例えば、「羯諦羯諦(ぎゃーていぎゃーてい)波羅羯諦(はーらーぎゃーてい)波羅僧羯諦(はーらーそうぎゃーてい)菩提薩婆訶(ぼーじーそわかー)」というフレーズは、サンスクリット語の呪文です。
日本語では意味をなさない当て字になっていますが、このフレーズには、言語という概念を超えた音の力が存在するようです。
”無”という思考のリセットをする際には、私という概念を取り外すとともに、言葉という概念もまた妄想であると認識しなければいけないのです。
人間は思考をした途端に間違いを生み出します。
なぜなら囚われた思考を用いて過去や未来に意識を飛ばしてしまうからです。
過去の失敗を悔やんでも、未来に恐れを抱いて不安になっても仕方がありません。
苦悩を取り払うためには、今この瞬間に意識を集中させることです。
人間には今この瞬間を生きることしかできません。
般若心経は、唱えることで意識を現在に持ってくることができるのです。
「般若心経」まとめ
般若心経は262文字で構成された仏教の教えです。
はるか昔から伝わるこのお経には、人間を苦しみから解放する強烈なパワーが秘められています。
以下記事の要約です。
- 般若心経とは、智慧の教えである
- 我々は無意識のうちに、特定の概念に囚われた世界を生きている
- 般若心経では、固定された観念や概念を取っ払い、ありのままの世界を見ている状態(空)を目指す
- 人間は煩悩を生み出す固定された観念や概念をリセットする(無)ことによって、苦しみから解放される
- 般若心経は、”無”を通して”空”を目指すお経である。
ぜひ参考にしてみてください。
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