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アリストテレス「ニコマコス倫理学」を分かりやすく解説

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アリストテレスはソクラテスやプラトンに並び、西洋最大の哲学者として知られています。

彼の知的探求の姿勢は後の世界に大きな影響を与えたことから、”万学の祖”と呼ばれることもあります。

彼の科学的分析は現代の研究によって空想の話が多いことが分かっていますが、倫理学などは未だに影響を持っています。

この記事では、アリストテレスの著書「ニコマコス倫理学」について解説していきます😆

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アリストテレスとは

Wikipedia参照

アリストテレス(紀元前384-紀元前322)は古代ギリシアの哲学者です。

彼の科学的・論理的な探究は、イスラーム哲学や近代哲学、近代論理学など様々な学問に影響を与えました。

彼は人間の本性が「知を愛する」ことだと考えており、これは哲学(philosophy)の語源となっています。

アリストテレスはマケドニアの都市スタゲイラにて、マケドニア王の侍医の息子として生まれます。

17歳でプラトンのアカデメイアに入学し、学問を学びます。

卒業してからはトルコやギリシャの島を渡り歩き、その間に海洋楽や生物学、地質学などに取り組みました。

彼は、アカデメイアにて共に学んだピュティアスの姪と結婚しましたが、奴隷だった情婦のヘルピュリスとの間にニコマコスという息子をもうけています。

アリストテレスはアレクサンドロス大王の保護を受け、大王の統治に助言する形で親交を深めていました。

しかし、大王が死去してからは敵意にさらされることとなり、エウボイア島に逃亡し、62歳で亡くなりました。

彼は非常に多くの書籍を記しましたが、その多くは紛失しており、現存するのは1/3程です。

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アリストテレス「ニコマコス倫理学」の解説

「ニコマコス倫理学」(紀元前4世紀)はアリストテレスによって書かれた哲学書です。

彼の道徳哲学をよく表現した作品となっており、良い人生を送るための指南書のような存在です。

彼の息子であったニコマコスに捧げるという意味を込めて、ニコマコス倫理学という名前がついています。

以降、詳しく解説していきます。

プラトンとアリストテレス

前提として押さえておきたいのが、プラトンとアリストテレスの関係性です。

プラトンのアカデメイアにて学んだアリストテレスですが、両者の主張は異なったものとなっています。

両者の主張をそれぞれ、プラトン主義アリストテレス主義と呼びます。

プラトン主義は、現実世界で人間が認知することができる全ての物の根底に形而上学的な実在を認めます。

真理は我々が見ている世界の背後にある、超越した場所(イデア界)に存在する、という考え方です。

例えば、我々は多種多様なリンゴを見ても、全てが同じリンゴという果物であることがすぐにわかります。

これは、我々の見えない超越した場所に真のリンゴ(リンゴのイデア)が存在しているから、現実世界でどんな形や色のリンゴが出てきても、それがリンゴであると認知できるのです。

一方アリストテレス主義は、もっと現実主義的であり、見たままの世界を理解しようとします。

世界の認識が人間の5感に基づいていることを前提に、事物を構成要素に分解し、分析していきます。

これが後の科学の発展に繋がるのです。

ちなみに彼は幸福や徳など、抽象的な事物に関しても分析しています。

人間の機能

アリストテレスは、人間について知るためには、そのものの機能について知る必要があると考えます。

プラトン主義的には形相(事物をその事物たらしめるもの)とは、超越した場所に存在するイデアですが、アリストテレスにとって形相は、あくまで単なる事物の秩序や成り立ちであり、そこまで重要なものではありませんでした。

だからこそ、事物の機能(目的因)に注目したのです。

具体例を挙げましょう。

船とは連結された板だから価値が認められるのでしょうか?

違います、船は海上での人の運搬を行うから価値が認められるのです。

つまり、船そのものの形相を知っても、板が連結されている事物でしかなく、それを本当に理解するには、その事物の機能を知る必要があるのです。

それでは、人間の機能は何でしょうか?

走ることや世界を見ること、音を聞くことは他の動物でもできます。

人間に唯一与えられた機能とは、理性に従って行動する能力である、とアリストテレスは言います。

我々は自分の心と行動を構築していく力があります、これは自然界において極めて異例な特殊な存在なのです。

人間とは何か

あなたは人を見るときに、数十億の細胞からなる生命体である、と認知しないでしょう。

我々は、他の人とその人を比較することで、認知し理解するのです。

そして他者とその人を比較する際に用いられる軸は、その人が持つ徳や熟練した技術などです。

つまり、人間とはこれまでに積み重ねてきた徳と選択の積み重ねなのです

他の人と比べて優れている、と思われる人は、今までに多くの優れた選択をしてきただけです。

つまり、最高の徳に基づいて判断・行動し、人生を構築すれば、誰しもが偉大な人になれるということです。

成功は、人間が持つ理性の力を十分に発揮し、優れた選択と行動を積み重ねられるかどうかにかかっているのです。

幸福の獲得

アリストテレスの倫理思想は、人間がどうすれば幸福になれるかを考えるところから始まっています。

彼はエウダイモニアという言葉を使って、幸福を表わします。(良く生きること、成功すること、繁栄すること、などの意味も含まれる)

このエウダイモニアという考え方は、現代のポジティブ心理学にも影響を与えています。

では、どうすれば人間は幸福になれるのか?

アリストテレスの出した結論は、「最大の幸福は、理性による選択から生じる」というものでした。

人間は理性的な判断を下せるという機能を持っています。

この機能を活用すれば、長期的な目線での最善を選択できるようになり、結果的に幸福を手に入れることができる、と考えたのです。

理性による選択

幸福を獲得するカギは”理性による選択”です。

つまり、快楽主義的に目の前の喜びだけを追うのではなく、より長い目で物事を理解し、最善を選択することが大切なのです

アリストテレスは、快楽に明け暮れる生活は有意義な行為の妨げになり、幸福にはなれないと言います。

理性的な道が純粋で偉大な快楽をもたらすと考えたのです。

欲求に満たさすだけの人生は畜獣の営む生活と変わりません。

そうではなく、修養をつみ、鍛錬を重ね、徳と結びつくような行為を行う生き方が、真の幸福をもたらすのです。

幸福は簡単に獲得できるものではありません。

長期間の鍛錬や目標への努力によって、初めて達成できるものなのです。

アリストテレスは友情と学問の重要性を説いています。

友情は理性と思考を扱う建設的な行為であり、その過程で自分の人格や理性を成長させることができます。

学問は理性を発揮する場所であり、幸福の源です。

哲学的な心理を理解し吸収したときに、その人はより高い幸福へと近づくことができるのです。

徳の実践

幸福になるには、理性による選択(徳の高い選択)をする必要があります。

プラトン主義では、徳を高めるためには正しい理解が必要であると考えましたが、アリストテレス主義は、行為によって徳を実践することに意味がある、と考えました。

欲情には基づかず、抑制的な選択による行為を行うことで、人間は徳を高めることができると考えたのです。

アリストテレスは制作と行為の分類を行いました。

制作とは現代的に言うところの仕事や労働に当てはまり、物体の生成が目的です。

一方行為は、それ自体が目的であり、特定の結果を求めません。

制作は物を作るのに対し、行為は人間を作ります。

理性的で徳の高い行為を積み重ねることで、素晴らしい人間が作られるのです。

現代社会への問題提起

人間が存在する理由、つまり機能(目的因)は、理性的な選択と実践を行うことであり、それは結果的に共同体や社会への貢献につながり、副産物的に幸福も手に入ります。

しかし、現代社会に目を向けると、行為ではなく制作、つまり労働に意識を傾けすぎている人が多いように思えます。

実際に我々は、国民総生産や経済産出量などの経済的な部分に注目しがちです。

しかし、アリストテレスの幸福に対する思想を当てはめると、このままでは人類が真の意味で幸福になることは難しいことが分かります。

人間の幸福とは大量生産大量消費に伴う経済の発展ではなく、個人の機能に基づいて良い人生を実現することにあり、その責任は一人ひとりにあるのです。

大切なのは、理性的な選択を積み重ねていくことです。

幸福自体を目的として追求するのではなく、有意義で理性的な人生を追求すれば、幸福は自然とついてくるのです。

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まとめ

アリストテレスは「ニコマコス倫理学」を通して、人間の幸福についてを考察しました。

理性的な選択と実践の積み重ねが人間を作り、結果的に幸福をもたらすという考え方は、現代においても色あせることがありません。

ぜひ参考にしてみてください😆

以下、記事のまとめです。

  • アリストテレスは古代ギリシアの哲学者である
  • 人間の機能とは、理性的な選択ができること
  • 幸福を獲得するには、理性的な選択による徳の積み重ねが重要である
  • 現代社会において、倫理学の重要性は高まっている

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