ポーターの競争戦略について聞いたことがある人は多いのではないでしょうか?
彼が作り上げた競争戦略の理論は今もなお、多くの企業を支えています。
また、経営論のバイブルとも呼ばれるポーターの著書「競争の戦略」は、現在でも多くの人に読まれています。
この記事では、そんなポーターの競争戦略・基本戦略について解説していきます。
ポーターとは
マイケル・ポーターとは、アメリカ合衆国の経済学者です。
ファイブフォース分析やバリューチェーンなどの競争戦略を生み出したことで知られています。
主な著書には、「競争の戦略」「国の競争優位」「競争戦略論」などがあります。
彼の主な経歴をまとめると、以下のようになります。
- 1971年にハーバード大学にて経営学修士を、1973年に同大学にて経済学博士号を取得した。
- 1982年には、ハーバード大学史上最年少で正教授となる。
- 現在はハーバード大学経営大学院教授を務めている。
- アメリカを中心に、多くの地域や企業の戦略アドバイザーを務めている。
ポーターの競争戦略

ポーターの競争戦略は、戦略的なポジショニングを中心に構築されます。
企業が属する業界の中で有利なポジションを発見し、その場所を確保、長期的に維持することを目指すのです。
ポーターの競争戦略の最重要コンセプトは、戦略的なポジショニングである
ポーターの戦略は、このような特徴から「ポジショニング学派」とも呼ばれます。
ちなみに、ポーターの戦略は数多く存在する戦略論の中の1つでしかありません。
彼の戦略が大正解である、という訳ではないので注意しましょう。
ポーターの基本戦略

ポーターは、戦略的なポジショニングを達成するために必要な長期的戦略として、3つを挙げます。
- コストのリーダーシップ戦略
- 差別化戦略
- 集中戦略
企業はこの中から1つ、もしくは複数を選択する必要があるのです。
コストのリーダーシップ戦略

コストのリーダーシップ戦略とは、他社よりも安く商品を売ることを指します。
ライバル企業よりも低価格で商品を提供することで、他社との競争における優位性を確保する、ということです。
そしてこの戦略は、競合他社が完全に代替可能な商品を提供している場合に有効です。
コストのリーダーシップ戦略とは、競合企業よりも安価で商品を提供することで、競争における優位性を獲得する戦略を指す
商品を安価で提供するためには企業のコスト体質を改善する必要があります。
低コスト体の企業であれば競合他社よりも安価で商品を提供することは可能でしょうが、高コスト体の企業が無理やり値段を下げると、それは自滅に繋がります。
基本的には需要に応じた価格設定をしつつも、低コスト体質企業であれば、さらなる値下げを目指すべきなのです。
この戦略を採用するべき企業、つまり低コスト体質の企業には、以下のような特徴があります。
- コスト的に優れた製品設計がある
- 工程エンジニアリングが熟練している
- 低コストの流通システムを持つ
- 社内のコスト統制がしっかりしている
差別化戦略

差別化戦略とは、様々な観点から自社の独自性を出していくことを指します。
差別化戦略は有効に活用すると、顧客を長期的に獲得することができるので、多くの企業で採用されます。
差別化戦略とは、競合他社と比較して優れた特徴を設けることで、競争における優位を獲得する戦略を指す
差別化を施す対象はいくつもあり、列挙すると以下のようになります。
- 商品の差別化(デザインや機能など)
- 社員の差別化(ホスピタリティの高い接客など)
- イメージの差別化(企業の印象、広告など)
また、差別化戦略を上手く活用することのできる企業には以下のような特徴があります。
- 高いマーケティング能力を持つ
- 企業独自の特徴や経験がある
- 優れたアイデアを出せる快適な環境
集中戦略

集中戦略とは、ある特定の地域や購入者層に資源を集中させることを指します。
企業の対象となる市場を細分化し、セグメントを定めていきます。
そして対象となるセグメント、つまり標的市場を決定したら、そこに集中的に経営資源を投資するのです。
経営資源を投入する際は、コストのリーダーシップ戦略や差別化戦略が役に立ちます。
集中戦略とは、企業の対象市場を特定のセグメントに定め、経営資源をそこに集中させることで、競争における優位を獲得する戦略を指す
セグメンテーション(市場の細分化)を行う際は、様々な切り口が存在します。
- 人口統計的変数(年齢や性別など)
- 地理的変数(地域や都市など)
- 心理的変数(性格やパーソナリティなど)
- 行動変数(利用頻度や利用状況など)
- 商品の属性変数(品質や性能など)
また、以下のような特徴を持つ企業がこの集中戦略をとるべきでしょう。
- 現場の状況を逐一伝える情報伝達システム
- 方向性を変更することへの柔軟性
- 企業としての集中力の高さ
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戦略の抱えるリスク

上記で挙げた3つの戦略も、決して万能ではなりません。
どの戦略にそれぞれリスクは存在しています。
コストのリーダーシップ戦略では、企業に低コスト体質という特徴がなければ失敗します。
また、テクノロジーが急激に進歩することで、短期間のうちに低価格の競争優位が優位ではなくなってしまうかもしれません。
差別化戦略の場合は、差別化要因を真似されることで差別化できなくなったり、差別化要因が顧客にとって好まれないものである可能性もあります。
集中戦略であれば、標的市場の市場規模が小さいと十分な利益を出すことはできません。
- コストのリーダーシップ戦略は市場の変化で低価格が競争優位になり得なくなるリスクがある
- 差別化戦略は、差別化要因が顧客にとって好まれないリスクがある
- 集中戦略はセグメントが小さいと収益に繋がらないリスクがある
どの戦略も、リスクと隣り合わせであることを理解することが大切です。
競争の本質

ポーターは1996年に発表した論文「戦略とは何か」にて、戦略の本質とは差別化である、と主張しています。
ここまで記事を読んで下さった方はもうお気づきかもしれませんが、3つの基本戦略はどれも、競合他社との差別化を行うための手段なのです。
つまり、どんな経営戦略であっても、結局は差別化というゴールに向かうということです。
これは、戦略的ポジショニングを通して、意図的にライバル企業と異なる独自の価値を発揮する、という彼のコンセプトにも合致します。
ただ、だからといって3つの基本戦略が無意味になるわけではありません。
差別化という言葉には非常に多くの要素が含まれており、それだけでは戦略として不十分です。
だからこそ、3つの基本戦略が存在するのです。
ポーター「競争戦略」のまとめ
ポーターの競争戦略について理解していただけたでしょうか?
彼は3つの基本戦略(コストのリーダーシップ戦略、差別化戦略、集中戦略)を活用することが、企業の成長にると言います。
また、その中でも差別化戦略は特に、競争の本質に近いとしています。
ぜひ参考にしてみてください。
- ポーターの競争戦略は、戦略的なポジショニングを中心コンセプトとする
- コストのリーダーシップ戦略は、競合企業よりも安価で商品を提供する戦略を指す
- 差別化戦略とは、競合他社と比較して優れた特徴を設ける戦略を指す
- 集中戦略とは、企業の対象市場を特定のセグメントに定め、経営資源をそこに集中させる戦略を指す
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