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プラトン「饗宴」を分かりやすく解説

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プラトンの「饗宴」をご存知ですか?

この本は世界で初めて”愛”について書かれた本です

哲学書であるため、少し内容は難しいですが、愛についての深い洞察が魅力の本となっています。

この記事では、そんなプラトン「饗宴」について解説していきます😆

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プラトンとは

Wikipedia参照

プラトン(紀元前427ー紀元前347)は古代ギリシアの哲学者です。

西洋哲学に大きな影響をもたらした人物であり、ソクラテスの弟子でもあります。

主な著書に「ソクラテスの弁明」「国家」「饗宴」などがあります。

研究分野は非常に多岐にわたり、芸術から文学、政治から哲学まで多種多様となっています。

時代背景

「饗宴」をより詳しく理解するためには、この本が書かれたときの時代背景をしっかりと知っておく必要があります。

プラトンが「饗宴」を執筆した時代は2400年前です。

老子や旧約聖書が成立した時代と同時期であり、これらと同じくプラトンの思想は後の西洋思想に大きな影響をもたらします。

プラトンが「饗宴」を書いたのには理由があります。

それは、当時の”欲望を求める社会”への問題提起でした。

プラトンが生きた時代の古代ギリシアは欲望に満ちていたのです。

紀元前5世紀のアテナイ(ギリシア)は直接民主制の形をとっていました。

競争が肯定され、実力主義社会が構成されていました。

そんな社会情勢の中、多くの人は「他人よりも多く、今よりも多く」何かを得ようとしていました。

つまり、欲望が肯定される時代だったわけです。

それに対応するように、政治家たちですらも、欲望を追い求めるようになります。

彼らは、物事の本質的な解決ではなく、どれだけ民衆の支持を集められるかを考え、弁論技術(言葉の技術)を鍛えるようになります

結果的に弁論術を教えるソフィストが人気となります。

民衆と政治家の、”物事の本質的な課題ではなく、欲望の追求のみを考える”姿勢が争いへと向かいます。

ペロポネソス戦争において、アテナイは敗北してしまうのです。

今までの素晴らしい発展は行き詰まり、社会情勢は悪化してしまいます

そんな古代ギリシアの”欲望を追い求める社会”に対して疑問を投げかけたのが、ソクラテスでありプラトンだったのです。

プラトンは”愛”という普遍的なテーマについての本を書くことによって、世界の人々に問いかけるのでした。

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プラトン「饗宴」の解説

ざっくりと「饗宴」のストーリーについて解説していきます。

舞台は古代ギリシアで行われた、気楽なパーティです。

宴が終わってしばらく休憩した後、何人かの男たちが”愛”について話し始めます。

主人公はソクラテスであり、プラトンが自分の意見をソクラテスに代弁させている色が強いです。(もちろんソクラテスの思想も入っています)

要は、飲み会のトークテーマが”恋愛”だった、みたいな感じです(笑)

登場人物は以下の通りですが、ほとんどはソクラテスとの対話の前座のような形になります。

  • パイドロス(文学好きの若者)
  • パウサ二アス(アガトンの恋人)
  • エリュクシマコス(医者)
  • アリストファネス(喜劇作家)
  • アガトン(悲劇作家)
  • ソクラテス(哲学者、プラトンの師匠)

一人ひとりが”愛とは何か”についてスピーチしていき、最後にソクラテスが真打ちとして登場し、全員を叩きのめしていきます。

そしてソクラテスが他のメンバーと対話していく中で、”愛”の正体についての考察を深めていきます。

”愛”とは何か?

ソクラテスはじめ、登場人物たちは”愛”とはエロースという存在であることを前提としています。

愛=エロース

登場人物の多くはエロースを神として扱い、この神の存在こそが”愛”である、と言います。

しかし、ソクラテスはその前提を壊します。

エロースとは人間のあるべき姿だと唱えたのです。

登場人物のアガトンはエロースのことを”美を追い求める優雅な神”を呼びます。

ソクラテスはそこに食いつき、神は完璧な存在であり、美を追い求めることは絶対にしない、と主張します。

そこから論理を転回していくと次のような構図ができあがります。

人間(無知)  →   神(知恵)

死すべきもの(人間)  →  不死なるもの(神)

エロース(愛)は、人間と神との間に存在するものである。

ソクラテスは、エロースとは神と人間の間に存在する、どちらにも属さないもの(ダイモーン)であることを主張します。

あるべき人間の姿

エロースは神ではないことが証明されたとき、そこに人間としてのあるべき姿を定義することができるようになります。

人間のあるべき理想の姿とは、エロースそのものなのです

人間は生まれつき無知ではありますが、継続的な努力を通して知恵を獲得しようとします。

つまり、人間から神へ、死すべきものから不死なるものへ、変化しようとするわけです

そしてこの姿勢こそが人間のあるべき姿である、とプラトンは唱えます。

思考して考え、知恵を得ようとする、これが人間の理想であると考えたのです。

エロースは哲学のシンボルであり、また人間と同じような存在であることが示されたのでした。

愛の行為とは

美を追い求めることは善きものを追い求めることです。

美を追い求めることは人間に幸福をもたらします。

では、何をしたときにその愛は得られるのでしょうか?

愛と呼ばれる行為とは一体どのようなものでしょうか?

全ての人間は懐妊状態にある

ソクラテスは愛の行為について、”精神面でも肉体面でも美しいものの中で子供を生むこと”だと捉えます。

愛の行為とは、精神面でも肉体面でも美しいものの中で子供を生むこと

つまり、愛を感じるときには、全ての人間は身体の面でも魂の面でも懐妊状態にある、ということです。

美しいものの中にいると、自然と出産したくなるのです。

ここでのポイントは、出産の定義が少しずれていることです。

多くの人は出産を赤ちゃんがうまれることだと捉えがちですが、プラトンの定義では、決して人間を生み出すことだけを指しているわけではありません。

作品を作ったり、人間関係を構築したり、など何かの行動を指しています。

出産には重要な役割があります。

それは、人間の不死の力を与えてくれるということです。

出産は人間に不死の可能性を与えてくれる

1人の人間が生き延びることができるのは、せいぜい100年ほどですが、出産ができるようになれば、非常に長い間人間という種は生き延びることができます。

出産とは、人間が神に近づくための方法なのです。

愛の素晴らしい効用とは出産であり、出産がもたらすものは不死なのです。

魂の出産

肉体のみならず、魂で懐妊している人間がいます。

それが以下のような人々です

  • 詩人
  • 職人
  • 政治家
  • 教育者

これらの人は、この世界に対して何かしらを生み出しています。

彼らの優れた知恵から生み出される”知恵の子”は不滅の命を持ちます。

これらの人が作り出したものは、彼らが死んでもなお、この世界に生き残り続けます。

それこそが愛の目指すところなのです。

愛の段階

ソクラテスの主張では、”愛”にはステージがあります。

究極の愛について理解するために、段階を経る必要があるのです。

肉体の美

肉体の美とは、物質的な美しさを認識することです。

人間の感覚器から得られる情報を頼りに構成される美しさです。

  • 顔がかわいい・かっこいい
  • 筋肉がある
  • 髪の色が綺麗

などは全てこの段階の属します。

精神の美

魂の美とは、精神の美しさをいいます。

社会での営みや習慣の美しさを理解することを指します

物理的には目で認識できないけど、確かに美しさを秘めているのです。

具体的には以下のような部分が挙げられます。

  • 心掛け
  • 生きがい
  • 社会的な美しさ
  • 習慣

イメージとしては、肉体の美よりも一段階上の美しさです。

知識の美

1つの肉体や精神ではなく、横断的に全てにまたがるような美しさを表わします。

全てに共通して美しい場合に、この知識の美を感じることができます。

例えば以下のようなものがあります。

  • 立派な言葉
  • 立派な思想
  • 綺麗な数式
  • 素晴らしい法則

この知識の美は、全ての学問の出発点でもあります。

哲学とはまさに、知識を愛して求める心があってこそ成り立つのです。

美そのもの

愛の奥義はここにたどり着きます。

”美そのもの”とは完全で永遠な美の姿を指します

美そのものを表わしており、美の本質でもあります。

哲学ではこれを「美のイデア」と呼びます。

美そのもの = 美のイデア

イデア  =  それ自体の本質

美のイデアはありとあらゆる場所から感じることができます。

  • 自然
  • 肉体
  • 社会
  • 知識
  • 芸術

人間が愛を感じるもの、美しいと感じるものは全て、”美のイデア”が宿ったものでしかないのです。

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「饗宴」のメッセージとは

饗宴は愛について語りつつも、最終的には人間の在り方についてを問いかける内容となっています。

この本が我々に伝えてくれることは何でしょうか?

正直に言うと、この本で語られている”愛”についての考察は万人には受け入れられないでしょう

話している内容が複雑なうえに、言葉の定義が現代とは少し違うので、混乱が混乱を呼んでしまうのです。

しかし、そんな中にも学べる部分があるのも確かです。

饗宴が描かれた時代は、本質ではなく欲望が社会を支配している時代でした。

本来の目的や理想は失われ、手段や欲望など、表面的な部分が重要視される時代となっていたのです。

その結果古代ギリシアは滅亡の危機を迎えていました。

理(ロゴス=論理)を想う(考える・思考する)ことは世界のあるべき姿を思い出させてくれます。

理想 = 理(ロゴス=論理や法則性) + 想う(考える・思考する)

理想とはそもそも、イデア(本質)の日本語訳です。

現代ではだいぶ意味が変わってきていますが、理想とはもともとイデアを指す存在です。

社会が行き詰ったときに、本当に大切なことは何か、理想とは何か、を考えることはとても重要です。

表層的な部分だけを見ていては世界は堕落していくのみなのです。

深層部分を理解しようとすること、理想を追い求めること、これらが重要なのです。

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まとめ

プラトンは「饗宴」を通して、愛とは何か、人間のあるべき姿とは何か、を解明していきました。

彼の本質を追求する姿勢は、当時の悲惨な状況のアテナイに新たな可能性を示したのでした。

以下記事のまとめです。

  • 「饗宴」が書かれた時代は欲望に満ちた世界だった
  • 愛とはエロースであり、エロースは神ではなく人間のあるべき姿である
    • 全ての人間が懐妊状態にある
    • 人間は出産という行為を通して、永遠性を獲得する
    • 愛は以下の4つの段階から成り立つ
      • 肉体の美
      • 精神の美
      • 知識の美
      • 美そのもの

ぜひ参考にしてみてください😆

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