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シェリング「ミクロ動機とマクロ行動」を分かりやすく解説:ゲーム理論とは

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近代経済学を賑わせている分野の一つにゲーム理論があります。

ナッシュやシェリングによって構築されたこの理論は、既存の経済学に大きな疑問を投げかけます。

また、戦略研究の礎の役割を果たし、冷戦下の核の影響力と抑止力についての考察などにも利用されています。

この記事では、シェリングの「ミクロ動機とマクロ行動」について解説していきます。

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シェリングとは

Wikipedia参照

トーマス・クロンビー・シェリング(1921-2016)とはアメリカの経済学者、政治学者です。

ゲーム理論を専門に扱っており、2005年にはその功績を讃えられ、ノーベル経済学賞を受賞しています。

彼の主な著書には、「ミクロ動機とマクロ行動」「紛争の戦略」などがあります。

1921年にカリフォルニアにて生まれたシェリングは、カリフォルニア州立大学バークレー校にて経済学を学び、1951年にはハーバード大学で博士号を取得します。

第二次世界大戦後はトルーマン政権の顧問を務め、政治提言を行います。

1958年にはハーバード大学の経済学教授に就任し、ジョン・F・ケネディ・スクールにて教鞭を取りました。

シェリングは2016年に亡くなりました。

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シェリング「ミクロ動機とマクロ行動」の解説

「ミクロ動機とマクロ行動」(1978)はシェリングによって書かれた経済学書です。

本書では、日常生活の色々な部分にゲーム理論を当てはめ、一人ひとりの心理に基づく行動(ミクロ動機)と全体としての振る舞い(マクロ行動)の関係性を解き明かしています。

以降、詳しい内容について解説していきます。

ゲーム理論

前提として、ゲーム理論とは何でしょうか?

シェリングはゲーム理論を以下のように定義していました。

ゲーム理論とは、2つの可能性の間によりよい選択、あるいは複数の可能性の間の最善の選択が、他人の行う選択次第で変わる場合に、合理的な人間はどのような選択をするのかを追求する学問である

つまり、誰かの選択を見て自分の選択を決断する、という人間のミクロ動機についての研究ということです。

ゲーム理論の具体例としては囚人のジレンマが非常に有名です。

ここでは解説は省き、他サイトにお譲りします。興味のある方はぜひこちらをご確認ください😆

囚人のジレンマとは?ゲーム理論の代表的なパレート最適とナッシュ均衡とともに解説
「囚人のジレンマ」とは、各人が自分にとって一番魅力的な選択肢を選んだ結果、協力した時よりも悪い結果を招いてしまうことです。ゲーム理論もモデルの一つでもあります。今回は、ゲーム理論の基本的な概念と代表的なモデルを解説します。

均衡は最適ではない

一般経済学では、利己的に合理的に行動する無数の個人が、全体の良好な結果をもたらす(均衡する)というロジックを持っています。

つまり、我々個人の人間は、自分の利益を最大化することだけを考えて行動すれば、自然に全体社会としても均衡して、ハッピーな状態になるというのです。

しかし、現実では個人の良い選択を積み重ねても、社会全体は良くならないことが多々あります。

囚人のジレンマなどはまさにそうでしょう。

自らの利益だけを考えると、囚人はお互いに懲役期間を伸ばすことになり、全体として最適ではない結果となります。

経済学理論の根底を担うのは均衡という考え方です。しかし、この均衡状態は決して最適な状態ではないのです。

均衡とはあくまで、複雑で流動的な関係性の中で偶然に落ち着いた状態が存在しているだけであり、均衡そのものが最適である、ということにはならないのです

例えば、長期的なインフレや高水準の失業率、経済成長の停滞はどれも均衡と呼ぶことができます。

しかし、これらが安全で快適で最適な状況であるか?と聞かれるとNOでしょう。

均衡状態であっても、悲惨の結果をもたらすことはあるのです。

ミクロ動機

人間の経済活動は全てミクロ動機によって決定されます。

また一般的な経済学では、人間は合理的に判断して行動する、という前提が置かれています。

しかし、シェリングは下記のようないくつかの要因によってミクロ動機は影響を受け、合理的な判断は悪い結果をもたらす可能性がある、と言います。

  • 人間の心理
  • 情報の非対称性

これらがミクロ動機に影響を与える要素です。

人間の心理

人間の行動は合理性を基準に決められている、という古典経済学的な発想は現代では多くの学者から否定されています。

人間のミクロ動機は、その行動が合理的か?ではなく、心理的に満足いくものか?で決まることもあるのです。

このあたりは、ゲーム理論や行動経済学などの分野で研究が進んでいます。

例えば、講演会が行われるホールにて、多くの人が前方の席には座らない、という現象が起こります。

合理的に考えれば、講演者を目の前で見ることができて、なおかつ周りに人がいないから快適に過ごせるため、前方のガラガラなエリアに座るべきでしょう。

しかし、多くの聴衆は皆と同じく後方部のエリアに座ります。

なぜなら、彼らの行動は合理性ではなく、その場の心理によって決められるからです。

自分だけが前に座ったら一人ぼっちになってしまうかもしれない、そうなると寂しいし恥ずかしい、だから後方部に座ろう!という心理的な決断なのです。

クリティカル・マス

ミクロ動機に影響を与える人間の心理の中で興味深いものに、クリティカル・マスというものがあります。

クリティカル・マスとは、最低限の水準を超えたら勝手に継続する活動があるとき、その最低基準を指す

例えば、赤信号を渡ることは普通はしませんが、大勢が信号無視していたら自分も無視してしまう、といった現象を指します。

このクリティカル・マスはあらゆる場所に存在しています。

社会運動にファッション、疫病に音楽など、様々です。

何かの活動にすごい勢いがあり、多くの人がそれに強い関心を持っている場合、クリティカル・マスを突破して大きなムーブメントが発生するのです。

つまり大抵の人は、例えそれが合理的ではなくても、皆がやっていれば自分もやる、という決断を下すのです。

情報の非対称性

人間が行動を決断する際のミクロ動機に影響を与えるもう一つの要因が、情報の非対称性です。

合理的な判断をするには、十分な情報が必要になります。

しかし、人間が何かを選択する際に全ての情報を持っていることは稀です。

つまり我々は、自らが合理的だと考えて出した結論が全然違うことが、往々にしてあるのです。

そして、この情報の非対称性は市場において特に大きな影響をもたらします。

例えば中古車市場では、かなり年季が入っており今すぐに壊れそうな中古車と、新品同然の高性能な中古車が存在しています。

中古車の販売側からすれば、そんなことは知っていて当然でしょうが、購入する側からすると、欠陥車の存在は理解していても、それがどの車なのか当てることはできません。

そこに情報の非対称性が存在するのです。

結果的に購入側は欠陥車を引き当てないように購入することをためらい、販売側は中古車を買ってほしいので値段を下げていきます。

そうすると、ミクロな観点から売上はでるでしょうが、マクロな目線で考えると市場規模は縮小していくのです。

マクロ行動

合理的なミクロ動機をもってしても、結果的に非合理的なマクロ行動が発生することはよくあります。

均衡状態は最適な状態である、という理論は間違っています。

情報の非対称性や人間の心理に伴う個人の合理的な判断は、全体として悪い結果を引き起こす可能性があるのです。

古典経済学では市場は万能であり、需要と供給の均衡を保つことで最適な資源の分配を施すことを主張します。

シェリングも、市場が個人の選択を全体に統合する大切な役割を果たしていると信じています。

しかし、人間のミクロ動機が数々の市場の失敗(悪いマクロ行動)を生み出してきたのも事実です。

現代では、人間の心理を踏まえた行動経済学や情報の非対称性を是正するテクノロジーなどの登場により、新たしいフェーズに突入しています。

これから世界はどうなっていくのか、注目する必要がありそうですね🤔

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まとめ

この記事ではシェリング「ミクロ動機とマクロ行動」について解説しました。

人間はその心理と情報の非対称性によって影響を受け、合理的な判断を誤ることがよくあります。

それは結果的にマクロな視点からの非合理性につながり、全体として享受できるメリットは少なくなってしまいます。

この主張は経済学界に波紋を呼び、新しい地平を切り開きました。

ぜひ参考にしてみてください😆

以下記事のまとめです。

シェリングとはアメリカの経済学者・政治学者である。

彼は、人間の利己的な行動が全体の最適化につながるとする古典経済学の主張に反対し、個人の利益追求が全体の悪い結果に繋がる可能性を示唆した。

その主な根拠は人間の心理と情報の非対称性によるミクロ動機への影響である。

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