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サムエルソン「経済学」を分かりやすく解説:新古典派総合とは

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20世紀の経済学に大きな影響を与えたサムエルソン。

彼の古典派経済学思想と新古典派経済学思想を合体させた新たなアイデアである”新古典派総合”は、経済界に新しい風を吹かせました。

彼の思想を記した経済学書「経済学」は、ケインズ思想をアメリカ中に広め、のべ1000万部を突破するほどのベストセラーとなりました。

この記事では、そんなサムエルソン「経済学」について解説していきます。

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サムエルソンとは

Wikipedia参照

ポール・アンソニー・サムエルソン(1915-2009)はアメリカの経済学者です。

新古典派総合を筆頭に、ストルパー=サミュエルソンの定理やサミュエルソン=ヒックスの乗数・加速度モデルなどの画期的なアイデアを経済学にもたらした人物です。

また、ノーベル経済学賞が設立されたのはサムエルソンにノーベル賞を渡すためである、という噂もあるほどの人物です。

彼の著書には「経済学」「経済分析の基礎」「心で語る経済学」などがあります。

アメリカはインディアナ州のユダヤ人家庭に生まれたサムエルソンは、16歳でシカゴ大学に入学します。

1936年にはシカゴ大学卒業し修士号を、1941年にはハーバード大学にて博士号を取得します。

その後はMITで教鞭をとり、教授として身を置きます。

1947年に出版された著書「経済分析の基礎」は大きな反響を呼び、彼の名を世界に広めます。

1966年-1981年まで週刊誌に経済されていたコラムをまとめた本である「経済学」は累計一千万部を超える大ヒットとなります。

また、戦時生産局や財務省など、多くの政府機関で補佐官を務めたことでも有名です。

結果的に彼は、第1回ジョン・ベイツ・クラーク賞(1947)第2回ノーベル経済学賞(1970)を受賞します。

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サムエルソン「経済学」の解説

サムエルソンの著書である「経済学」は非常に多くの人に親しまれ、ケインズ思想をアメリカ中に広める手助けをしました。

「経済学」は読みやすい文体が特徴的です。

週刊誌「ニューズウィーク」にてコラムとして掲載されていたサムエルソンの言葉がまとめられたものなので、論文とは違い、誰もが理解しやすい経済学書なのです。

以降、彼の主張について解説していきます。

時代背景

「経済学」が出版された当時(1948)は、アメリカ内の経済思想が分断されていました。

古典派経済学思想を信仰し、政府による市場経済への介入を必要以上に嫌がる人々と、新古典派経済学思想を信仰し、政府による管理を望むものがいたのです。

論点は、政府がどれほど市場に介入してくるかの度合でした。

この論争はある意味では必然的でもあったといえます。

1948年といえば、第二次世界大戦が終戦した直後です。

社会主義的・全体主義的であった国々は敗戦し、その危険性や脆弱性にばかり注目が集まっていました。

古典派経済学思想の人々が、政府主導の国家体制は社会主義的であると叩くのは当然でしょう。

一方、世界恐慌が起きた際に、ルーズベルト大統領がニューディール政策を通して、政府主体でアメリカ経済を立て直したのも事実です。

新古典派経済学思想の人々は、ニューディール政策を主な根拠とし、政府の市場関与の重要性を説くのです。

政府の役割を最小限におさえようとする古典派の考え方は、あくまで理想でしかない、というスタンスです。

中道派宣言

サムエルソンは当時の時代背景の中で、中道派宣言をします。

強く中道主義を主張したのです。

中道主義とは、市場の自由と政府による規制を併せ持つ経済、を目指す思想を指す

サムエルソンは現実をしっかり見て、そこから実践経済へ活かすことの重要性を主張します。

事実、アメリカ内での経済思想論争はイデオロギーに浸食されている節がありました。

多くの人々が理想論だけを語り、お互いの弱点について理解するなどの、現実と向き合うことを避けていたのでしょう。

大切なのは、どちらが優れているかを決めるのではなく、よりより社会を作るにはどうすれば良いかを考えることなのです。

古典派経済学では市場の自由を、新古典派経済では政府の規制を重要視します。

サムエルソンは両者を合体させて、”新古典派総合”という新たな概念を生み出します。

彼が目指すのは、”公的秩序を保つための規制”と”市場の競争の自由”のバランスをとった経済です。

リーマンショックと市場社会主義

市場の自由と政府による規制は、それぞれのデメリットがあります。

過去の具体例を見てみましょう。

政府による規制のない資本主義(自由市場)においては、サブプライムローン問題やそれに伴って発生したリーマンショックが挙げられます。

政府による規制が存在しない市場において、銀行は低所得者に高金利ローンを組ませました。

アメリカ市場の好況と住宅建築ブームがあいまって、新築住宅は飛ぶように売れます。

しかし、ある時に地価と不動産価格は大幅に下落、ローン返済不可能となった人々が大量発生し、リーマンショックが発生しました。

また政府による規制が入りすぎている資本主義は、ソビエト連邦の市場社会主義が挙げられます。

ソ連では、古典派経済学が主張する、自由市場における価格の自動調節機能を政府が主導で行いました。

市場に存在する商品の価格を中央当局が決定したのです。

結果的に供給不足もしくは供給過多が引き起こされ、ソ連の経済は破綻しました。

新古典派総合

彼の主張は”新古典派総合”と称されます。

この主張では、資本主義経済に時として発生する”市場の失敗”を認めます。

自由市場に規制なしで任せっきりだと、何かしらの問題が発生することは仕方がないと捉えたのです。

ただ、資本の最適な分配と生産性向上、社会全体の繁栄という点では、市場はとても合理的に作用すると考えていました。

つまり、基本的には規制なしの自由市場に経済を任せつつ(古典派経済学)、何か問題が起きそうな場合は政府による規制などが働く(新古典派経済学)、というスタンスです。

またサムエルソンは、自由放任主義の経済において投資や雇用が自動的に均衡するのは偶然である、と考えました。

市場の有用性は理解しつつも、万能ではないことを主張したのです。

政府は、民間組織が支出を控えているときには、積極的にお金を出すことや、中央銀行を通して金利を下げてお金が市場に出やすくするなどのアプローチをする必要があります。

政府の役割

政府の役割は市場に不具合が発生したときに対処するだけではありません。

彼らには、国民の市場価値や生活水準を高める役割があると、サムエルソンは考えます。

そのうえで、政府がフォーカスするべき4つの軸を提示しました。

それが以下の4つです。

  • 人的資本
  • 天然資源
  • 資本
  • 技術力(イノベーション)

既存の経済モデルにおける政府の役割をまっとうしていると、労働者1人当たりの生産量が変わることはありません。

どれだけ労働者の人数を増やしたところで、全体としての生産性は変わらないのです。

また、経済規模が大きくなったからといって、国民の生活水準が自動的に上がることはありません。

政府は上記の4つの軸を意図的に成長させていく必要があるのです。

民間と政府の協力

民間には民間の、政府には政府の得意分野があります。

例えば民間であれば、彼らは利潤追求につながる行為は全力で取り組みます。

競争が激しければ、企業は生き残りをかけて全力で戦うでしょう。

その過程で会社自体の生産性は大きく向上し、結果的に経済全体への好影響や生活水準の上昇などが期待できます。

ただ、企業としては利益につながるかどうか分からないような分野には投資はしません。

その最たる例が学問や研究です。

これらは、特定の分野に対して非常に興味がある人が勝手にやっているだけで、直接的に企業の利潤には繋がりません。

しかし、人類の繁栄はここから始まるといっても過言ではないほどの重要性を秘めていることも事実です。

このような、民間では扱えないような部分を、政府は積極的にサポートしていくことが大切です

具体的には、補助金を出したり、特許を用いたアイデアの保護をしたりして、イノベーションを加速させる必要があります。

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まとめ

サムエルソンは「経済学」を通して、市場の自由と政府による規制の両立(古典派総合)という新たな方向性を示しました。

現在は多くの先進国で、サムエルソンの古典派総合的な方針がとられています。

彼は世界の経済発展に類まれなる貢献をしました。

ぜひ参考にしてみてください😆

以下記事のまとめです。

  • サムエルソンとは、アメリカの経済学者である
  • 「経済学」の内容
    • 1940年代のアメリカでは、古典派と新古典派の経済学思想の対立があった
    • 中道派宣言を通して、サムエルソンは両者の両立を目指す
    • 新古典派総合とは、市場の自由と政府の規制を併せ持つ新たな経済体制を指す
      • 政府の役割は、市場の失敗の補完と、国家の成長の促進
      • 民間と政府の協力体制を築くことが重要である

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