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ウェーバー「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」を分かりやすく解説

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宗教という存在は、人類に様々な影響を与えてきました。

それは倫理観や道徳観に限らず、政治や経済にまで及びます。

ドイツの経済学者であるマックス・ウェーバーは、資本主義と宗教の関連性に注目しました。

プロテスタントにはなぜお金持ちが多いのか、そこには宗教的な要因があるのか?

この記事では、マックス・ウェーバーの著書「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」について解説していきます。

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マックス・ウェーバーとは

Wikipedia参照

マックス・ウェーバー(1864-1920)とは、ドイツの政治学者・社会学者・経済学者です。

歴史から経済、さらには哲学までの幅広い興味分野を持っており、さらにはドイツの政治にも熱心に言及していたことから、著名な知識人となった人物です。

彼の著書には「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」「職業としての学問」「支配の社会学」などがあります。

マックス・ウェーバーは政治家の父とプロテスタントの母の間に生まれます。

1882年にハイデルベルク大学にて法律を学び、ベルリン大学に移って法学博士号を取得します。

大学を卒業してからは、同じくベルリン大学の私講師として法律を講義しました。

一見すると順風満帆に見える彼の人生ですが、それは父親の死去によって一変します。

1896年に父親を失ったウェーバーは、生前の父との確執が原因でうつ状態となり、しばらく休職します。

そして長い休養期間を経て、1904年に「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」を発表します。

それ以降、精力的に研究と執筆を続けたウェーバーは、ドイツ民主党の創設にも尽力します。

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ウェーバー「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」の解説

「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」は、資本主義の発展に大きく貢献をした宗教的価値観についての研究書です。

自由な繁栄と宗教的な支配にはどのような関係があるのでしょうか?

以降、詳しく解説していきます。

宗教的時代背景

19-20世紀は資本主義が大きく発展した時期でした。

ヨーロッパでは数多くの国が経済的な発展を遂げ、多くの富裕層が出現しました。

そこで興味深いのは、当時のドイツにおいて、富裕層(企業家、経営者、資本家、熟練労働者など)の多くはプロテスタントだった、という事実です。

高等教育機関に属する学生の割合も、圧倒的にカトリックよりもプロテスタントの方が多かったのです。

多くの人は、カトリック教会の支配的統治が廃止されて、経済的利潤の自由な追求ができるようになったからだ!と結論づけていました。

しかし、ウェーバーはこの結論に疑問符を突きつけます。

実際は中産階級の市民はプロテスタントの圧政であっても喜んで受け入れていました。

むしろ、倫理的に欠ける部分を持つ、緩いカトリック教会の規制に反発しているくらいでした。

一見すると、経済的な自由な繁栄と、プロテスタント的な厳しい戒律は両立しないように思えます。

ウェーバーはこの問題を解明するべく、研究を始めます。

資本主義の精神

資本主義は昔から存在するシステムでした。

貨幣を介して行われる自由な経済体制は、古くは中国やインドに存在しました。

ただし、そこにはウェーバーが主張する”資本主義の精神”はありませんでした。

ウェーバーが定義する”資本主義の精神”とは、道徳的ただしさと利潤追求の思想をあわせもつ、倫理観のことを指します。

資本主義の精神とは、道徳的な正しさと利潤追求の思想を併せ持つ倫理観を指す

単なる金儲けのための手段としての取引や交易ではなく、特別なエートスを持って行われる経済活動を推進することで、経済は大きく発展するのです。

そして、ウェーバーはこの”資本主義の精神””プロテスタントの倫理”は上手く合致したと考えました。

資本主義が発展するために必要な”資本主義の精神”と、キリスト教の宗派であるプロテスタントが持つ”プロテスタントの倫理”は、丁度一致したのです。

近代的な資本主義が誕生したのと、プロテスタントが勢力を広めた時期が同じなのも、これが原因であると、ウェーバーは考えます。

プロテスタントの倫理

多くの宗教的価値観は、資本主義とは相容れない関係性を築きます。

例えば、人々の職業選択の自由に制約を加えたり、社会的な流動性に制限を生んだりと、経済発展に少なからず妨げを作り出すのです。

これらの原因は、その宗教的倫理が世俗を超越してしまっているからです。

宗教の影響範囲があまりにも広すぎて、世俗を無視して行動してしまうのです。

世俗を超えて、人間の行動の規制を生み出すことは、まったくもって合理的ではありません。

特に資本主義の精神には大きく反してしまいます。

一方、プロテスタントの宗教的価値観は、神の存在を捉えつつも世俗の内側で生きることを推奨しました。

宗教的な情熱を表現するための手段として、労働や仕事をすることを勧めたのです。

人は労働を通して聖なる生き方ができる、という考え方です。

この倫理観は、プロテスタントに経済的優位性を提供しました。

以降、プロテスタントの倫理観について詳しく見ていきます。

予定説

プロテスタントの倫理を理解するためには、宗教革命に多大なる影響を与えた神学者ジャン・カルヴァン「予定説」を理解する必要があります。

この「予定説」は、プロテスタントの人々が全身全霊で経済活動に取り組む根本的な理由です。

「予定説」とは、神による永遠の救済を得られる人物は既に決まっており、個人の功徳によって変更できるものではない、という考え方です。

予定説とは、神による永遠の救済を得られる人間は既に決まっている、という考え方

どんなに努力をしても、その決定を覆すことはできないのです。

そして、自分が選ばれし人間なのかは、生きている間には知ることができません。

よって、プロテスタントの信徒たちには、自分が選ばれし者である!という確証が必要となりました。

そしてその確証が、”労働を通して経済活動を立派に果たすこと”だったのです。

禁欲的に労働に取り組むことは、神に選ばれた者しかできないのです。

信徒の人々は、その証拠を得るために、必死になって経済活動に勤しみます。

これがプロテスタントの倫理観の根底に流れている思想です。

合理主義

プロテスタントはカトリックに比べて、経済的な合理主義を好む傾向がありました。

利益そのものを目的として経済活動をしていたのです。

つまり、商品を買うためにお金を稼ぐのではなく、生産性の向上や資源の最適な分配などに基づく、合理的で効率的な富の創造、そのもの自体に喜びを見出していたのです

多くの場合は目標の金額を稼ぐことができたら、労働に対するモチベーションは下がってしまいます。

なぜなら労働は楽しくなく、別の目的のための手段だからです。

しかし、プロテスタントに人々にとっては労働自体が喜びでした。

労働して利潤を追求すること、どうやって合理的・効率的に仕事を遂行できるかを考えること、これらが彼らにとっての目的だったのです。

自己抑制

プロテスタントの倫理観の中には、強い自己抑制の意志が含まれます。

例えば、無駄な消費活動はしないとか、禁欲を徹底するなどです。

これは、彼らの富から生み出される誘惑に対する嫌悪感が原因です

富自体を追求することは問題ではありません。

利潤を追求する労働という行為は推奨されていました。

しかし、そこで得た富を何か自分の欲望のために使うことが、卑しいことだと認識されていたのです。

結果的にプロテスタントの人々は、得た利潤をさらなる労働の生産性向上に投資するようになります。

彼らにとっては、労働に全力で取り組むこと自体が救いだったのです。

天職

プロテスタントの倫理観の中には、”天職”という概念が存在します。

天職とは、神からの使命によって、世俗的な職業に宗教的な意義を認めることを指す

既存の宗教的枠組みでは、労働は世俗のものであり、重要な意味を持ちませんでした。

しかし、世俗の中で生きることに注目するプロテスタントにとって労働はとても大切なものです。

結果的にこれが”天職”という新たな観念へと結びつくのです。

”天職”を見つけ出し、全力で労働に取り組むことは、宗教的な情熱を示す手段となります。

よって、多くのプロテスタントは学問や労働に熱心に取り組みます。

それが結果的に富の創造、経済の発展へと繋がるのです。

現代社会の問題点

資本主義とは本来、資源の適切な分配と利用による、富の更なる創造を目指すものです。

しかし現代社会では、購入と消費ばかりに意識が向き、消費主義社会的な風潮が蔓延っています。

多くの人は何も考えずに、浪費と消費を繰り返します。

ウェーバーは、現代の資本主義社会には宗教的な動機が欠けていると考えます。

宗教的な倫理観を持つ労働者は、自らの財産を築くことも、社会の経済的な発展に貢献することもできるのです。

一方なんの考えも持たない人々、つまり宗教的な動機が欠けている者たちは、浪費と消費を繰り返し、堕落した資本主義の構築に貢献しています。

自らの欲望にだけ忠実に行動し、資本主義の劣化を加速させるのです。

本書は、宗教によって形成された人格が、富の創造や経済の発展に大きな影響をもたらすことを証明しました。

しかし、この人格は宗教に頼ることでしか得られないものではありません。

事実プロテスタントではない人間の多くも、巨万の富を築き、経済に貢献をしています。

重要なのは、”資本主義の精神”を持って生きることなのです。

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ウェーバー「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」まとめ

マックス・ウェーバーは彼の著書である「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」を通して、宗教的価値観が資本主義にもたらした影響を考察しました。

プロテスタントの持つ倫理観を学ぶことは、自らの経済的成功を収めることや、健全な資本主義を発展させることに繋がります。

ぜひ参考にしてみてください😆

以下記事のまとめです。

  • マックス・ウェーバーとは、ドイツの政治学者・社会学者・経済学者である
  • 19-20世紀に富を築き、資本主義の発展に貢献した人々の多くはプロテスタントであった
  • 資本主義の精神とは、道徳的な正しさと利潤追求の思想を併せ持つ倫理観を指す
  • プロテスタントの倫理とは、合理的に勤勉に労働に励むことで救われる、という考え方
  • カルヴァンの「予定説」がプロテスタント思想の根底に流れており、プロテスタントは合理主義を重視する
  • 自己抑制は、結果的に経済の健全な発展に貢献し、天職という概念は、労働に宗教的な意味を与える
  • 現代社会は消費と浪費を繰り返す風潮が強く、本来目指すべき資本主義から離れている

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