古代ローマの5賢帝時代、奴隷という身分に生まれながらも人生を哲学に打ち込み、最終的にはローマ皇帝にまで影響を与えることとなる、伝説の哲学者エピクテトスという人物がいました。
彼が人生をかけて導き出した「良い人生」とはいったいどのうようなものなのでしょうか?
一緒に見てきましょう。
エピクテトスとは?
エピクテトスとは、古代ローマが繁栄していた時代、いわゆる五賢帝時代を生きた哲学者です。
彼は両親が奴隷だったこともあり、生まれつき奴隷という身分でしたが、解放されてからは哲学者として活動していました。
繁栄の時代で皆が豊かな人生を歩む中、奴隷として生き続け、なおかつ足も不自由だったという彼を人びとは不幸な人だ、というかもしれませんが、彼自身はそんなこと全く思っていませんでした。
彼は哲学に没頭することで、強い心を手に入れており、生半可な他者の意見などノーダメージといった感じでした。
彼の哲学は多くの人からリスペクトされており、ニーチェや夏目漱石もそんな中の一部だったとされています。
エピクテトス:奴隷の哲学
ここからは彼の哲学について解説していきます。
生まれが奴隷だったということもあり、その過去が彼の思想にかなりの影響を与えていることが分かるはずです。
何にもとらわれず自由に生きろ
2つの人生があったとします。
- 何かにとらわれている人生
- 何にもとらわれない人生
あなたはどちらを選びますか?
おそらく多くの人は「何にもとらわれない人生」を選ばれたのではないでしょうか?
そうなんです。
人間は基本的に自由を求めて生きているのです。
誰だって何かにとらわれた人生はいやなはずです。
では現実を考えてみましょう。
あなたが求めるモノは何ですか?
富、名声、権力、これらを求めて生きていませんか?
多くの人は有名人やお金持ちを見ると、自分もそうなりたい、と思うかもしれません。
本当にそうでしょうか?
彼らは自由に生きることができていません。
地位や名誉や財産にとらわれた人生を過ごしています。
それが本当に豊かな人生だと言うことができるのでしょうか?
「何にもとらわれず、自由に生きたい」と「富、名声、権力が欲しい」という2つの欲求は相反しています。
そしてエピクテトスは、もし「良い生き方」「幸せな人生」を手に入れたいのであれば、自由に生きることを考え、富、名声、権力などは軽く見よ、と言います。
その発言の裏には、彼が奴隷の出身であるという事実が隠されています。
自分ではどうしようもない物事は軽視せよ
自由に生きたい人は、富、名声、権力を軽視しましょう。
なぜなら、これらのようなものは自分の力でコントロールできないからです。
人間の身に起こる物事は大きく分けて2つに分類することができます。
- 自分の力でコントロールできるもの
- 自分の力ではコントロールできないもの
もしあなたの感情が動いたとき、物事に取り組むとき、それは上記2つのどちらに属するのかをしっかりと考えましょう。
そして、自分にコントロールできる物事は重要視し、自分ではどうしようもない物事は軽視しましょう。
例えば、
- 自分の発言
- 表情
- 食べ物
- 睡眠時間
これらのような、自分でコントロールできるものは重要視しましょう。
逆に、
- 富
- 名声
- 権力
- 他者
これらのような、自分がどんなに努力してもコントロールするのが難しいモノは軽く見ましょう。
この世の中には、自分ではコントロールできない、どうしようもない物事がたくさんあります。
特にエピクテトスの場合は、生まれつき奴隷という身分だったこともあり、自分の力ではどうしようもありませんでした。
しかしそんなことに悩んでいては人生は始まりません。
エピクテトスは、自分がコントロールできる事象にのみ注力せよ、と言います。
自分がコントロールできない物事に毎回反応していると、この世の不幸が全て自分に降りかかっているような錯覚に陥ります。
自分にコントロールできないことばかりに注目して、実際にコントロールできず思い通りに物事が進まないと、怒ったり悲しんだりします。
それでは「良い人生」を生きることはできません。
自分がコントロールできないものは軽視しましょう。
ちなみに、エピクテトスの哲学はストア派と呼ばれ、ストイックの語源にもなったと言われています。
欲望をコントロールすることにフォーカスした哲学派なので、とても大変そうに聞こえますが、この章で紹介したように全ての欲望を制御するのではなく、自分がコントロールできる範囲の物事に関しては、欲望をコントロールすることを指します。
自分の意志を貫け
自由に生きるとは、自分の意志を貫いて生きることを指します。
自分が正しいと思うなら、他人の意見など気にするな!
というのがエピクテトスの主張です。
彼は奴隷という身分が故に、多くのものを管理されていました。
自由に働くことも動くこともできない、食べたい物もたべることができない、そんな彼でしたが、一つだけ自由に使えるモノを持っていました。
それが思想なのです。
あなたの心の中にある判断も思想も意志も全て、あなたの所有物です。
あなたの思想は、自由に扱うことができ、コントロールできるのです。
それは例え神が相手だとしても同じです。決して人間から思想を奪うことはできません。
しかし、多くの人は自分の意志を持たず、他人の考えに便乗しています。
これは自分以外の誰かに自分の意志を明け渡すことに他なりません。
人間にとって本当に自由なのは意志だけなのです。
そんな意志を他人に渡してしまうなんて、絶対にやってはいけない、とエピクテトスは言います。
人間の意志とは、自分が何をしたいか、何を大切にしたいか、何を重視したいか、を意味しています。
人間に与えられた唯一の本当の自由なのです。
他者の意見、周りの目、全て関係ありません。
自分のやりたいように生きましょう!
目の前の苦痛を選び、将来のリスクに備えよ
人間は目の前の快楽にとらわれてしまいます。
多くの人が快楽におぼれ、そのあとに後悔しているのは事実でしょう。
実は、欲望や快楽もまた悩みを生むタネなのです。
快楽だけを追及していては、いずれやってくる大きな苦痛に直面するのです。
今を快楽や欲望のままに生きている人は、いずれやってくる大きな悩みや痛みを見て見ぬふりしているだけなのです。
だったら、目の前にある小さな苦痛に耐えましょう。
目の前の快楽に溺れるのではなく。目の前にある小さな苦痛を乗り越えていくことで、大きな苦痛を味わうリスクを減らすのです。
目の前にある快楽の中でも厄介なのは、承認欲求であるとエピクテトスは言います。
承認欲求は誰にでもあります。これは自然発生的なものなので仕方ないでしょう。
しかしこれが大きくなりすぎるのは良くありません。
なぜなら拡大していく承認欲求は、あなたを奴隷にしてしまうからです。
承認欲求を重視して、他人の目ばかりを気にすることは、自分の行動を自分以外の誰かに握られ、支配されていることを指します。
自由な生き方を自ら放棄しているのです。
承認欲求はできるだけ持たないようにしましょう。
内省を心掛けよ
自由に生きていくうえで重要なことは、自分がどのような人間かをしっかりと把握し、自分の強みに磨きをかけることだ、とエピクテトスは言います。
皆さんは、自分がどんな人間でどんな良い点があるか分かっていますか?
常に自らを点検し、己の中にある強さを見つけ出し、その強さに磨きをかけましょう。
そうすれば、どんな困難が立ちはだかろうと、自分を見失うことなく、それを克服することができるのです。
エピクテトスの思想:まとめ
奴隷の身分として生まれたエピクテトスは、誰よりも自由の大切さを説きました。
彼の主張は以下の通りです。
- 何にもとらわれず自由に生きろ
- 自分ではどうしようもない物事は軽視せよ
- 自分の意志を貫け
- 目の前の苦痛を選び、将来のリスクに備えよ
- 内省を心掛けよ
これらを踏まえ、自由に生きましょう!
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