中国にはとても長い歴史があります。
時代が長ければその分、色々な支配者がでてきます。
多くの人は権力を持ちすぎたあまり失墜していくことが多いですが、そんな中でも平和な時代を作り上げていった人たちもいます。
その中の一人が太宗李世民、そして彼について書かれた本が貞観政要です。
この本は遠い昔から帝王学の教科書として、数多くのリーダーたちに読まれてきました。
この記事では、そんな貞観政要について解説していきます。
貞観政要とは?
中国4000年の歴史の中で、特に平和な時代を築いた唐の第2代皇帝、太宗李世民。
彼の優れた政治力、人間力は人々に平和と幸福をもたらし、貞観の治と呼ばれる太平の世を作り出しました。
貞観政要は、そんな李世民の政治に関する言動や行動を記した書物であり、帝王学の教科書として長い間使われてきました。
中国の歴代王朝の君主たちや、日本の北条家、足利家、徳川家にも愛読されており、その重要性が分かります。
また、貞観政要の中身に関しては創業(0から新しく何かを作る、0→1)ではなく守成(既にあるものを存続させ、さらに成長させる、1→100)について書かれています。
創業と守成はどちらとも大切ですが、李世民の時代においては守成に重きをフェーズだったようです。
貞観政要の教え
ここからは貞観政要の教えについて説明していきます。
帝王学の教科書的な役割を果たす通り、この本は非常に目線が高いです。
1人の国民のマインドセットについて何か助言をする、というよりかは人々をどう先導していき、どう平和な国家を作り出すか、について書かれています。
自制心
人間は欲深い生き物です。
過去の歴史を見ても、多くのリーダーが己の欲望のままに政治を行った結果失墜しています。
特に人間という動物は、ヒエラルキーの上に行けば行くほど権力が強くなり、やりたい放題し始めます。
もしかしたら皆さんもどこかでこれを経験しているかもしれませんね(笑)
貞観政要では、国を治めるためにまずリーダーが自分自身を治めよ、と書かれていいます。
自分をコントロールできない人間が集団をコントロールできるわけない、ということです。
そしてもう1つ、自分を制してくれる部下を持て、と書かれています。
自分の力だけで自制心を維持し続けるのは難しいです。
どんなに自分をコントロールできる人であったとしても、一瞬の気の迷いは生じてしまいます。
だからこそ、リーダーには自分のことを律してくれる部下や仲間が必要なのです。
李世民の場合は、魏徴・房玄齢・杜如晦・王珪などの優秀な部下たちがいました。
李世民は自分を律しようと努力をしていましたが、それでもたまに欲望が出てきてしまいます。
そんな時に、素晴らしい家臣たちが全力で止めにかかるのです。
このように、リーダーは自分を律し、仲間から律されることで平和と成長をもたらすことができるのです。
責任感と緊張感
優れたリーダーは、責任感と緊張感の出すべきタイミングをわきまえています。
貞観政要での事例を見てみましょう。
李世民が治めていた時代は、日照りや洪水が何度も起こり、大飢饉が発生していました。
非常事態の中で人々は、自分たちの息子や娘を売ることでなんとか生き延びていました。
それを知った李世民は、国の財宝を売り払い、そこで生まれたお金で売られた子供たちを買い戻したそうです。
彼は国民の苦しみは己の苦しみととらえ、国の長として責任を取ったのです。
このことから分かるのは、優れたリーダーはピンチの時にこそ責任感を出すべき、ということです。
国の不幸は自分の責任である、というように認識し、それに対する行動を起こす必要があるということです。
また緊急事態に責任感を出すのと同じく、平穏無事な時こそ緊張感を出しましょう。
皆が困っている際は責任感を出し、皆が油断しているときは緊張感を出すのです。
兼聴
あなたは人の話をしっかりと聞いていますか?
貞観政要の教えの1つに、優れたリーダーは兼聴であり、愚かなリーダーは偏信である、というものがあります。
兼聴とは、誰の意見でも広く聞き、歴史から学ぶ姿勢を指します。
偏信とは、自分が気に入った人の意見だけを聞く姿勢を指します。
優れたリーダーとは、どんな人からもどんな物事からも学ぼうとする姿勢がある、兼聴を備えた人物なのです。
この教えは、理解するのと実際の行動で示すのには大きな違いがあります。
この教えを聞くと始めは誰でも納得します。
しかし自分がリーダーとなり、権力を持った途端に偏信となる人が非常に多いです。
事実、歴史上のリーダーは気に入らない家臣がいると、その一族ごと皆殺しにしていたりします。
そんな恐怖があるから部下は上司に意見を言えない、上司は気に入った部下の意見しか聞かない、という最悪の構造が生まれやすいのです。
それでは太平の世を作り上げるなんて不可能です。
隋王朝の煬帝は偏信だったから滅亡したのです。
相手の立場や身分関係なく、広く意見を聞き入れ、歴史からも学ぶ姿勢を忘れないようにしましょう。
3つの鏡
優れたリーダーというのは、3つの鏡を持っています。
それが、銅の鏡、昔の鏡、人の鏡です。
銅の鏡とはいわゆる写し鏡のことで、それを見ることで自分の身だしなみを整えることができます。
昔の鏡とは歴史を見ることであり、世の中の栄枯盛衰を知ることができます。
人の鏡とは自分以外の人の姿や言葉を見聞きすることで、物事の善悪について知ることができます。
1つ目の銅の鏡での、身だしなみを整える、というのは内省をすることを指します。
常に自分と向き合い、自己分析、自己内省を繰り返すことで自分がなりたい姿へと近づいていくことができます。また自分の強みや弱みを把握することもできるので、人間的に成長していくことができます。
2つ目の昔の鏡では、世の中の栄枯盛衰、つまり発展と衰退を知ることの大切さを語っています。
過去の歴史から、なぜある国は滅亡し、ある国は大きく発展したのか、を学ぶことで自分の国にその学びを適応させることができるのです。
特に、別国の成功を再現することは難しいですが、失敗を避けることはできます。全ての失敗や衰退には必ず理由があります。
歴史を学ぶことでこれらを理解し、自国で同じ過ちを繰り返さないようにしましょう。
3つ目の人の鏡では、他人の意見を聞くことの大切さを説いています。
どんなに優れた人でも、その人の意見には必ず何かしらの偏見もしくは先入観が含まれているものです。他の人の意見を聞かずに、自分が絶対に正しいと思い込むほど滑稽なことはありません。
物事というのは、ある人からすると善でも、別人から見ると悪になるのです。
色々な方向からの視点や意見を理解することは、優れたリーダーにはなくてはならない能力です。
そして、これら3つの鏡を意識することで、リーダーとしての心構えを整えられるのです。
陰口は聞き流す
人の上に立つものは誹謗中傷の的にされます。
根も葉もない噂話や陰口を聞くこともあるでしょう。
そんな時、優れたリーダーはそれらを聞き流します。
噂話や陰口は広まりやすく、話のタネになりやすいですが、そこから新たな価値は全く生まれません。
リーダーがそんな噂話にいちいち反応していては、冷静さを失い正常な判断ができなくなってしまいます。
リーダーの目的はその人が支配する場所の平和と発展です。
これを忘れず、くだらない陰口や噂に反応することを辞めましょう。
「貞観政要」まとめ
貞観政要は、中国に古くから伝わる帝王学の教科書です。
この本は多くのリーダーに読み継がれ、数々の平和と発展に貢献してきました。
本書ではこの他にもリーダーとしてのあるべき姿が書かれていますので、ぜひ手に取って見てください。
- 自分を制する心と仲間を持つ
- ピンチの時には責任感を出し、平和な時には緊張感を出す
- 多くの人の意見を聞き、歴史からも学ぶ
- 3つの鏡を意識する
- 噂や陰口は全て聞き流す
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