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アダム・スミス「国富論」を分かりやすく解説

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現代の経済学の基礎を作り上げたアダム・スミス。

彼の著書である「国富論」は、大衆の関心を集めた初めての経済書として知られています。

官僚主義や既得権益が蔓延る政治に対して、国民の不満が溜まっていた時期に出版されたこともあり、その影響力は凄まじいものでした。

この記事では、そんなアダム・スミス著「国富論」について解説していきます。

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アダム・スミスとは

Wikipedia参照

アダム・スミス(1723-1790)はイギリスの哲学者・経済学者です。

経済学を体系化させ、新たな学問として樹立させたことで知られています。

主な著書は倫理学書「道徳感情論」や経済学書「国富論」などがあります。

スコットランドで生まれたスミスは、15歳でグラスゴー大学にて道徳哲学を学び、卒業後にオックスフォード大学に入学します。

エディンバラ大学での公開講義を開始したのちに、グラスゴー大学の論理学教授に就任します(1751年)。

そして1763年に彼は大学教授を辞め、貴族の家庭教師になります。

貴族の外遊に同行する形でスミスはヨーロッパを巡り、色々な学者や哲学者と交流すると同時に、各地の経済動向を自分の目で確かめます。

数多くの学びを得た彼は、それを参考に経済的視点から政治や歴史を解読していきます。

結果的に10年の歳月をかけて「国富論」を書き上げたのです。

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アダム・スミス「国富論」の解説

「国富論」(1776)はアダム・スミスによって書かれた経済学書です。

2巻構成で38万語からなっている大作であり、過去の経済的事例に関する細かな記述を多く含みます。

また本書の中心には、支配者の愚行や既得権益の横行に対する強い批判が含まれています。

政府に対する鋭い批判と、それを支える多くの過去事例によって構成された本書は、当時の人々に大きな反響を生みました。

時代背景

「国富論」が書かれた18世紀は、官僚主義的な政府に対する国民の不満が溜まっている時代でした。

多くの役人は国の発展よりも自らの富を増やすことの集中し、ありとあらゆる方法で国民から財産を巻き上げていました。

例えば、地税や租税、関税や消費税などの税、恣意的な規制の決定などが挙げられます。

また、戦争や植民地化が蔓延る時代でもあり、多くの人は国家の動きに振り回されていました。

18世紀の時点では、「経済学」という言葉も存在していませんでした。

経済に関する問題は「政治経済学」と呼ばれ、あくまで政治や社会問題の一部でした。

「国富論」の登場により、経済学は政治学や哲学、倫理学とはまた別に独立した研究分野である、と決定されます。

アダム・スミスの根本思想

スミスの経済に対する主張を理解するためには、まず彼の根本思想を理解することが重要です。

彼は「国富論」を出版する17年前に、哲学者として「道徳感情論」という書籍を出版しています。

そこに、彼の哲学的・倫理的根本思想が記されています。

彼は、人間には他者に対する思いやりがあり、その道徳的な力によって社会はまとまっている、と考えていました。

そして、その他者に対する思いやりは、各個人がそれぞれ自分たちの欲求を満たすことでさらに増加する、と考えました。

自分たちの欲求を満たすことで、次には「他者を助けよう!」という思いにいたる、というロジックです。

国富論では、全ての人が自己の利益を自由に追求することが、国家と国民の繁栄につながる、と主張します。

これはまさに、スミスの哲学的な視点が経済に融合したものとなります。

彼は人間の良心を強く信じた人だったのです。

「国富論」における主な主張

ここからは、「国富論」の経済的な主張について解説していきます。

道徳哲学教授でもあったスミスの主張は、倫理的に優れたものが多く、今でも得られる学びが多くあります。

見えざる手

国家の人々が欲望や利己心に基づいて購買行動をしても、それ自体は全く問題にはならず、結果的には全体調和が保たれる、とスミスは主張します。

なぜなら、全ての個人が己の利益を最大化するように行動すれば、自由市場においては「見えざる手」が働いて、最終的には全体利益の増大に行く着くからです。

一人ひとりがより良い生活を求めて正直に働くことで、資源は最適に利用され、社会は繁栄していく、と考えたのです。

見えざる手とは、個人が利己的な経済行動をとることで、社会全体の最適な資本配分につながる、という思想を指す

分業

「見えざる手」を働かせるためには、個人と社会の利益を最大化するように努力しなければいけません。

そして、この利益の最大化に貢献するのが「分業」というアイデアです。

分業とは、能力に応じて作業を分担し、もっと効率的に作業できる人に仕事を割り振ることを指す

分業の良いところは、農業や工業において生産までの時間を大幅に削減できることです。

1人の社員がまんべんなく全ての仕事をこなすよりも、1つの仕事にフォーカスしている方が効率が良いのは当然です。

また、同じ仕事を長年続けていると、そこに熟練度やノウハウが溜まっていきます。

これが社会の効率化へと繋がるのです。

例えば、田舎で食物を育てる農家の人たちは、生産から食物管理、営業から資本管理まで全てを行わなければいけません。

これでは、本業である食物の育成に集中することができません。

しかし、各分野でそれぞれ専門家を雇って分業体制を築くことができれば、生産性は一気に上がります

食物育成は農家が、食物管理は生産管理の専門家が、営業は営業のプロが、資本管理は会計士がやってくれるようになれば、全てが上手く回るのです。

経済活動以外への適応

分業による専門化が進めば、多くの仕事がより効率的に達成され、知識はさらなる発展を遂げます。

そして、この分業というアイデアは、経済活動以外にも適応できます。

例えば、哲学や芸術などの創造的活動などです。

分業は、資本の最適化だけでなく、社会の繁栄にまで影響をもたらすのです。

スミスは国家がどうすれば豊かになるか、という問いに対して「国民の労働がふつうに行われる際の熟練度、技能、判断力の程度を上げること」を主張しました。

つまり、彼にとっての豊かな国とは、分業がしっかりと根付いている国なのです。

長時間労働するわけでもなく、自分の専門分野を短期集中して行うことで、豊かな暮らしをする。

働いていない人は多いが、社会全体では多くの人が欲求を満たせている、そんな国が豊かな国なのです。

国が豊かになる方法

スミスは国家が繁栄するための方法をいくつも挙げていますが、その中でも強く主張しているのが以下の3つです。

  • 国民が節約を心掛ける
  • 貯金を投資する
  • 貿易に力を入れる

国民が節約を心掛けることは非常に重要です。

社会の発展に関連することのないような消費、つまり浪費をすることは国家が貧しくなることと同義です。

社会的に価値のないものへの浪費は、社会を劣化させる危険因子なのです。

勤勉ではなく節約が資本増加の直接の原因である

アダム・スミス「国富論」

また、貯金を投資することも大切です。

貯蓄や貯金は溜まっているだけでは価値がありません。

それを社会へ投資することによって、生産活動を促進してくことが豊かな社会を構築するためには大切なのです。

ただし、ここでいう投資は生産的な目的に限ります。

国家が豊かになるための強力な手段は貿易です。

事実、過去に栄えていた国家のほとんどは海運貿易で富を得ていました。

自国で手に入らないような原料を入手し、それを商品として売り出すことで、大きな利益を得るのです。

特に工業製品は未加工の商品と比べても、価値が高まるので、外国に売り出すことができれば大きな富を生み出せます。

国家レベルでの分業と表現することもできるでしょう。

略奪行為は悪

スミスは、戦争や植民地化などの略奪行為や、自由市場を壊す独占的な貿易会社などに批判的な意見を持っていました。

他国から略奪することで得られる繁栄は短期的であり、長期的平和には至らないと考えていたのです。

略奪の結果として得られた富は、多くの場合浪費へと流れてしまいます。

そもそも、略奪行為を行った時点でそこに投じられた金銭は浪費なのです。

国家も個人と同じく、貯蓄や投資をせずに浪費ばかりしていたら、いつか行き詰まります。

だからこそ、自国の資源を地道に開発し、貿易にも力を入れ、高い価値を持つ商品を作る、というサイクルを重視したのです。

基本的な秩序と安全を担保しつつも、自由市場において自由な経済活動を行うことが、スミスの目指した理想像でした。

政府の役割

今までの主張を前提に置いたうえで、スミスが定義する政府の役割は以下の3つです。

  1. 国家を他の独立社会の暴力や侵略から守る
  2. 国家の構成員を他の構成員の不正や抑圧から守る(司法制度の確立)
  3. 公共事業・公共施設の推進

これらを国民から徴収した税金でまかなうことで、自由経済の保証をします。

現在の日本は、これに近いものができているのではないでしょうか?

また、スミスは国民全員が最低限の読み書きと計算をできるようにすることも重視しています。

国家は賢明な政府と勤勉な国民の協力によって成長することができます。

国民が浪費ばかりを繰り返していたら、国家がどんなに頑張っても、長期的繁栄は得られません。

政府は堕落することなく自らの使命をまっとうし、国民は道徳観と利己心を持って行動することで、国富は増加し、国家は繁栄するのです。

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アダム・スミス「国富論」まとめ

この記事ではアダム・スミス「国富論」について解説しました。

社会に経済学という新たな枠組みを創り出した本ということもあり、内容は非常に密度の濃いものとなっています。

ぜひ参考にしてみてください😆

以下記事のまとめです。

  • アダム・スミスとはイギリスの哲学者・経済学者である
  • 「国富論」は政府が堕落し、戦争や植民地化が横行する時代に出版
  • アダム・スミスの根本思想、利己心の追求は社会全体の調和へと繋がる
    • 己の欲望を追求すると、社会全体は見えざる手に導かれ最適化する
    • 分業を取り入れることで、生産性を格段に上げることができる
    • 国を豊かにする方法は、節約・投資・貿易
    • 植民地化をはじめとする略奪行為は悪であり、長期的な繁栄をもたらさない
    • 政府の役割は、自由市場を保証することである

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