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ゲーリー・ベッカー「人的資本」を分かりやすく解説

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経済学の論点の1つに、投資というものがあります。

何に投資をするのが一番収益率が高いのか?

どうすれば効果的な投資ができるのか?

多くの人は悩んでいるでしょう。

この問題に一つの解決案を提案した人物がいます。

アメリカの経済学者である、ゲーリー・ベッガーです。

この記事では、そんな彼の論文である「人的資本」について解説していきます😆

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ゲーリー・ベッカーとは

Wikipedia参照

ゲーリー・ベッカー(1930-2014)とはアメリカ合衆国の経済学者・社会学者です。

経済学を起点に幅広い分野を研究したことで知られ、1992年にはノーベル経済学賞を受賞しています。

彼の主な著書には「家族行動の経済学的アプローチ」「家族の経済学」「差別の経済学」などがあります。

ベッカーはペンシルバニア州で生まれ、ブルックリンで育ちました。

プリンストン大学に入学し最初の学位を取得、シカゴ大学にて人種差別に関する論文を書き、博士号を取得しています。

シカゴ大学時代には、ミルトン・フリードマンをはじめとする世界を牽引する経済学者のもとで経済学を学びました。

大学を卒業した後は、コロンビア大学で教鞭をとったり、アメリカの経済雑誌「ビジネスウィーク」にてコラムを執筆したりします。

また、ダニエル・カーネマンらと共に経済コンサルタント会社の設立も行っています。

彼は1967年にジョン・ベイツ・クラーク賞を、1992年にはノーベル経済学賞を、2007年には大統領自由勲章を授与されています。

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ゲーリー・ベッカー「人的資本」の解説

「人的資本」(1964)はベッカーによって書かれた経済論文です。

彼はこの論文の中で、学校教育や労働が人的資本にどのような影響をもたらすかを考察しています。

また、「人的資本」というタイトルですが、訓練などによって高めることができる能力のことを指します。

人的資本とは、教育や訓練を通して高めることができる人間個人の能力を指す

ちなみに、ベッカーの経済的観点からあらゆる社会現象を読み解く姿勢は、後の社会学に大きな影響を与えました。

彼の研究分野は差別や結婚、犯罪にまで及んだとされています。

以降、「人的資本」の内容について詳しく見ていきます。

人的資本への投資

ベッカーは教育問題を中心に、人間の個人的能力を高めることの重要性を研究していきます。

そして、彼の論文での主張は一言に集約されます。

全ての投資の中で一番価値のあるものは、人的資本への投資(人間への投資)である。

彼の主張を支える根拠は、歴史から発見することができます。

例えば、第二次世界大戦後のアジア諸国は大きく発展し、現在でも成長を続けています。

これは、人的資本への投資、すなわち教育の重要性を示す具体例です。

天然資源には恵まれず、商品を生産する際の原材料は全て海外からの輸入に頼っている彼らは、資源に頼った成長をすることができませんでした。

だからこそ、教育への投資に力をいれ、それが技術革新などの好スパイラルへの繋がり、大きな経済成長を遂げたのです。

教育

人的資本への投資とは、まさしく教育を指します。

教育は個人の経済的価値を高めることができます。

これは、人々に新たな視点で物事を考える能力を与え、経済合理性の高い行動を可能にし、新たな産業や製品の創造すらも可能にしてしまうのです。

多くの国家の所得成長には説明できない部分が多々あるが、その大半は教育である、とベッカーは主張します。

彼は、戦後の世界において大学を卒業する人が増えたことが、経済発展に大きな影響を与えたと言います。

現代人の我々からすると、就職に有利だからとか、出世に有利だから、といった理由で大学に行く人も多いように感じられます。

では、なぜ大学に行くことが経済発展に貢献することとなるのでしょうか?

ベッカーは大学出身者には知識や技術は勿論のこと、”問題を分析する能力”を備えている点を強調しています。

もともと大学に入学できるポテンシャルを持った人間が、さらに高い思考力を獲得することで、社会に対してより良いパフォーマンスを発揮できるようになるのです。

誤解

人的資本という考え方は、人間を経済的価値で判断する考え方です。

一部の人はこれを、人間を機械や奴隷のように扱う考え方であり、不道徳である!と非難します。

また、人的資本の考えをより深めると、高い人的資本を持つ人が低い資本力の人物を搾取するのではないか?といった懐疑も生まれます。

これらはあながち間違いではないでしょう。

しかしベッカーはそこまで悲観的に人的資本を考えていません。

人的資本への投資とは、純粋に人間に対する投資であり、その人の価値を高めるものは全て当てはまります。

健康状態に気を使って身体に良いものを食べたり、自らの所得を増やすために勉強したり、自分が楽しいと思うものに取り組んだり、そんなことを一般的には人的投資と呼びます。

高い収益率

人的資本への投資にはメリットが多くあります。

ざっと例を挙げると次のようになります。

  • 高い収益率を誇る
  • 誰にも奪うことができない
  • 一生成長し続ける

特に高い収益率を持つことには、注目するべきでしょう。

人的資本への投資は最初はあまりリターンを期待できません。

投資の成果が反映されるのに時間がかかるからです。

しかし、人的投資から得られる利益は年々増加し、収益率はどんどん増えていくとベッガーは言います。

他の投資と比較しても、長期的な収益率では大きな差があります。

例えば、製造業への投資による長期的収益率は7%なのに対して、大学教育の長期的収益率は11-13%とされています。

また、教育によってもたらされるメリットは金銭だけではありません。

高い人的資本価値を持つ人間は、高い賃金と恵まれた環境を提供してくれるような、良い企業で働くことができるでしょう。

そうすれば、精神的な幸福までもを獲得することができます。

人的資本への投資は、経済社会の繁栄への貢献だけではなく、個人的な幸福と安定した生活にまで寄与してくれるのです

アメリカ大統領選では、ジョージ・ブッシュを筆頭に多くの候補者が人的投資を主張することも不思議ではないでしょう。

金銭と時間に見合うかどうか

人的投資の影響力は非常に大きいです。

しかし、だからと言ってなんの考えも無しに大学に進学することはオススメできません。

教育という投資に費やされるのは金銭だけではありません。時間の機会費用も失っているのです。

人的資本への投資をする際は、果たしてその投資が機会費用に見合うかどうかを考える必要があります。

例えば大学にて博士号を取得するには、一般的には学部期間の4年間に加え、5年間の時間を費やす必要があります。

その期間でもし自分がどこかの会社に勤務していた場合と比較して、より得られる効用(メリット)の大きい方を選ばなければいけません。

また、現代では大学の学費の上昇や質の低下などが発生しており、ベッカー自身も状況が変わった場合は話は別である、と主張しています。

ただ、人生100年時代と呼ばれる現代でもありますので、長期的な成長を見込める人的投資はより効果的であるとも言えます。

とにもかくにも、自らの経済的価値を効率的に高める方法を模索して実行することは非常に重要です。

格差と機会の不平等

人的資本という観点から社会を見ると、格差の根本原因が機会の不平等であることが分かります。

いわゆる富裕層と貧困層の格差は、人的資本の価値の格差でもあります。

では人的資本の格差はどこから生まれるのか、それが機会の格差です。

ここで言う機会とは、当人の経済的価値を高める可能性がある教育や訓練などです。

誰しもが人的資本への投資を行うことで、利益を得ることができ、自分の目指す理想的な生活を営むことができます。

自ら諦めて、人的投資を辞めてしまう場合は自己責任でしょう。

しかし、生まれながらの環境が原因で機会を得られなかった人がいる場合、そこに格差が存在していることの証明となります。

スイスでは等しい教育水準を保っているため収入も平等ですが、アメリカでは収入分布が非常に不均衡であるようにです。

ただ、この格差問題もインターネットの発明と普及によって解決の兆しが見えてきているようにも思えます。

誰もが無限の知に容易にアクセスできる現代においては、人的資本への投資のハードルは間違いなく下がりました。

これからの時代はさらに人的投資の重要性が上がるでしょう。

アメリカ労働省のデータ(2014)では、大学教育を受けた人はそうでない人に比べて時給換算で98%も多く稼いでいるそうです。

世界中のやる気のある若者はインターネットを使ってどんどん経済的価値を高めていきます。

このチャンスを活かすも殺すもあなた次第なのです。

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ゲーリー・ベッカー「人的資本」まとめ

ベッカーは彼の論文「人的資本」を通して、人的資本への投資の可能性について研究しました。

彼は不動産や株など全ての投資の中で、最も大きな利益を生み出す者が人的投資だと言っています。

現在はインターネットの発達のおかげで、非常に人的投資をしやすい時代です。

自分自身の経済的価値について一度考え直してみるのもいいかもしれません🤔

以下記事のまとめです。

  • ゲーリー・ベッカーとはアメリカの経済学者・社会学者である。
  • 人的資本への投資(人間への投資)は、あらゆる投資対象の中で最も大きな利益を得られるものである。

ぜひ参考にしてみてください😆

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